暗殺された伊藤博文は死の直前に何を思ったか

 読売文学賞・毎日出版文化賞などの受賞歴がある作家の黒川創(57)が、ノンフィクション形式で書いた長編小説。原題は『暗殺者たち』。安重根(アン・ジュングン)がハルビン駅で暗殺した伊藤博文もまた、青年時代には暗殺者だったという事実に基づいた小説だ。伊藤博文は、天皇廃位を模索する学者を刀で斬ったことがある。その伊藤博文が安重根の銃弾に倒れたのは、暗殺者が暗殺された事件-というのがこの小説の基本的な立場だ。

 著者の黒川創は、伊藤博文が死の直前、韓国人に撃たれたと知って「ばかなやつ」と語った-という伝説のような話を引用しつつ、なぜそんなことを言ったのかを想像した。「これほど衰退した韓国を、今になって独立という正論だけでどうやって立て直すというのか」と伊藤博文は考えたかもしれないという。だが黒川は、伊藤博文は安重根の心情を理解しただろう、と考える。「二人には、逃亡者となって身を託す先がないときの心情を互いに知る者としての、共通点が感じられる」と記した。

 本書は、夏目漱石が1909年に大韓帝国や満州を視察した後に書いた旅行記について、日本学を専攻するロシアの大学生らを前に語り手が講演を行うという形式で始まり、20世紀初めの日本の知性史を概観する。

 「サムライ」として青年期を過ごした伊藤博文が英語に深く慣れ親しんで国家指導者になる過程や、その時代の日本の社会主義革命家らが体制転覆のため天皇暗殺を謀る過程が、口述の形で再現されている。222ページ、1万3000ウォン(約1330円)。

朴海鉉(パク・ヘヒョン)記者
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