【社説】韓国の非正社員数を減らす新統計庁長の「マジック」

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領直属の雇用委員会が「非正社員の統計を改善することで労使・政府が合意した」と発表した。現在の統計は元々正社員でも妊娠、疾病などで一時的にパートタイム勤務をする場合なども非正社員の一種の「パートタイム労働者」として集計している。文在寅政権はこうした人々を非正社員から除外しようとしている。労働形態が多様化し、パートタイム労働者は昨年時点で266万人を数え、9年間で2倍以上増えた。うち12.6%が正社員の性格を帯びている。雇用委員会の決定通りに除外が決まれば、非正社員(654万人)の数字が33万人減り、その分正社員が増えることになる。実態は変わらないにもかかわらず、統計上だけ雇用情勢が改善したように仕立てるものだ。

 「非正社員対策を立てる上で基礎になる統計を適正に算出することが重要だ」とする雇用委の説明には一理ある。しかし、16年ぶりに見直す集計方式がよりによって非正社員の統計上の数を減らすものであれば、誤解を生みかねない。ただでさえ経済政策が失敗しているのに、いきなり統計庁長を更迭したばかりだ。青瓦台(大統領府)の意向に沿った統計を作成するつもりではないかと疑われる中、統計方法見直しも行われれば、統計に対する信頼が揺らぐのは間違いない。

 新統計庁長を巡る論争も高まっている。新庁長が主張する方式に従えば、所得下位20%の可処分所得の減少幅が2.3%となり、これまでの統計方式(12.8%)より大幅に小さくなるという。統計の歪曲(わいきょく)だ。今後はこうした数値の発表が相次ぐ見通しだ。統計庁公務員労組は統計庁長更迭について、「統計の公正性、中立性を破壊する愚かな措置だ」とする声明を出した。統計歪曲で一時的に国民の視線をそらし、経済の現実を隠すことはできるだろうが、長続きしないだろう。

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