【社説】「所得主導」の次は「包容国家」、財源はどうするつもりか

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領が「包容国家」とか言いながら、「国民の生活に国家が全生涯にわって責任を負わなければならない」と主張した。所得主導成長が批判を受けると、新たなアジェンダとして包容国家を持ち出したとみられる。聞こえが良い話だ。問題はそのカネを誰が出すのかだ。

 二極化と格差拡大、高齢化傾向の中で、政府の役割は重要になりつつある。経済的、社会的に取り残される弱者、貧困化する高齢者のために政府が最小限の生活を保障することは当面の責務だ。問題は財源だ。文大統領が示した「全生涯に対する国家責任」を実現するためには、天文学的な費用がかかる。しかし、文大統領はこれまでもそうだったが、最も重要な費用の問題について、何も語らなかった。

 政府が約束した福祉支出の請求書はすでに続々舞い込んでいる。来年には給与労働者が健康保険、国民年金、雇用保険など4大社会保険料として、平均で月給の10分の1を負担しなければならないという分析も示されている。今年は社会保険料は平均で月給の8.5%だが、来年には9.8%、2030年には12.8%に高まる見通しだ。福祉支出の拡大が原因だ。

 特に健康保険料は健保適用対象を大幅に拡大する「文在寅ケア」で急激な引き上げが避けられなくなった。現政権下では30兆ウォン(約2兆9500億円)かかるが、費用は急速に膨らみ、次期政権では52兆ウォンが必要になる。雇用保険支出も失業・育児休職手当の給付期間を延ばしたほか、自己都合退職者も給付対象に含めようとしている。支出が増えただけ負担も増えざるを得ない。

 社会保険料だけではなく、税金負担も高まる。政府は来年の予算を9.7%増額し、任期内に7-8%ずつ増額を見込んでいる。飲食店、コンビニエンスストアの経営者に税金を年600万ウォンをばらまくほど金遣いが荒い。当面は税収が好調かもしれないが、いずれは増税の請求書が国民に回される。

 社会保険料に税金を加えると、国民が所得から天引きされる金額が来年は30%を超えることになる。これは序章にすぎない。医療、雇用、教育などあらゆる分野で税金ばらまきで問題を解決しようとして、福祉支出が雪だるま式に膨らむ中、世界で最も急速に進む少子高齢化が重なり、国民の負担率は急速に上昇する。国民は現政権による政策が今必ず必要なものかどうか、無責任なポピュリズムでないのかを冷静に判断しなければならない。

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