【社説】「戒厳文書」を徹底捜査の末に空振り、韓国検察の言い訳

 いわゆる「戒厳文書」について捜査を行ってきた合同捜査チームが活動を中止した。元機務司令官(機務司令部は韓国軍の情報部隊)が海外での事情聴取に応じないため、真相把握が難しいというのがその表向きの理由だ。合同捜査チームは検察と軍検察から37人が集まり、104日かけて204人に対して取り調べを行った。さらに韓国国防部(省に相当)、陸軍本部、大統領記録官にも家宅捜索を行った。しかし「内乱陰謀」や「クーデター未遂」に関する証拠や証言は結局見当たらなかった。

 最初から無理な捜査だった。文書は弾劾を主張する勢力はもちろん、弾劾に反対する勢力による暴動などに備える非常計画と法的手続きを検討するものばかりだった。また実際にそのような最悪の事態は起こらず、文書は書類だけで終わった。しかも文書の作成は国防部の会議で事前に検討され、韓国軍は文書を保管までしていた。公開の会議でクーデターを検討し、内乱陰謀に関する文書を廃棄せず保管するなど考えられないことだ。

 韓国大統領府は今年4月、文書に関する報告を受けた直後から2カ月にわたり沈黙を続けている。その後、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の海外歴訪中に突然「国の安全に関わる」として捜査チームを立ち上げるよう特別の指示を下した。しかし結論は最初から分かり切っていた。しらみつぶしに捜査を行ったが、想定通りの結果が出なかったため、結局は「事件の鍵を握る人物が行方をくらましたから」などと言い訳をしているのだ。

 合同捜査チームはこの日、関係する軍関係者らを起訴した。しかし容疑は内乱陰謀ではなく、問題の文書を訓練の参考にするよう2級秘密文書にしたことが、戒厳を検討した事実を隠すための虚偽公文書作成に該当するということだった。しかしこの文書は現政権発足の翌日から政府の公式オンラインシステムで公表されていた。全く前後のつじつまが合わない話だ。

 前政権では下命捜査によって多くの罪のない人たちが捜査を受け刑務所行きとなった。企業経営者の中には抗議の自殺を行った人物もいた。そのほとんどは最終的に無罪となったが、その責任は誰も負わなかった。今の政権でも同じようなことが繰り返されている。検察はこれまで2年近くかけて積弊捜査に没頭し、通常の事件に対する捜査は後回しにされ、未解決の事件は通常の2倍以上になっているという。その全てについて最終的には責任を負わねばならなくなるだろう。

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