【コラム】国民年金の「真実」を隠す韓国政府

【コラム】国民年金の「真実」を隠す韓国政府

 「将来孫ができたとして、長官がその世代から恨み言を言われるようなことをしているのではないか。(このままならば)長官の孫の世代は所得の37.7%を国民年金保険料として支払わなければならない状況になりかねない」

 先月国会で行われた国政監査で野党・自由韓国党の金世淵(キム・セヨン)国会議員が保健福祉部(省に相当)の長官に述べた言葉だ。金議員は「政府が国民年金再編案を作成する場合、まだ生まれてもいない世代に負いきれないような重荷を負わせるべきではない」として、冒頭の発言に及んだ。

 国民年金の保険料率(所得に占める国民年金保険料の割合)を引き上げずに、年金支給額を引き上げると約束するのは将来の世代をだます行為だとの主張だ。

 記者には2歳の娘がいる。政府が国民年金改革に成功しなければ、娘が40歳になる2057年に韓国の国民年金基金は底をつく。そうなれば、バイトしの保険料を年金として分配しなければなくなる。現在9%の保険料率は2060年には29.3%まで上昇する。月給が約500万ウォン(約50万円)の会社員ならば、月額保険料は73万ウォン前後になる。専門家が「能力ある若者は韓国を離れるべきかどうか深く悩んでいる」と指摘するほどだ。

 2057年時点でも定年が60歳ならば、国民年金が枯渇した後、娘は20年間も上昇し続ける保険料を負担して退職することになる。金議員が言及した37.7%は2088年に韓国人が負担する可能性がある保険料率だ。

 乱暴に言えば、国民年金は後から投資する人が拠出する元金で先に投資した人に収益を支払う「自転車操業」的な技法すら使えない。高齢者に支払う年金支出を賄う若者が不足しているためだ。国民年金が枯渇する2057年には少子高齢化の影響で、60歳以上の人口1人当たり25-59歳の人口は0.7人にすぎない見通しだ。60歳以上の人口1人に対し、25-59歳が2.5人いる現在とは全く異なる状況だ。

 こんな状況にもかかわらず、韓国政府は最近、「保険料を引き上げる」という説明どころか、「年金を増やす」方向で国民年金改革を進めようとしている。労働界からは、大統領の公約のように、老後に受け取る国民年金を生涯平均所得の50%前後とすべきだという主張もある。

 高齢層の貧困解消に向け、国民年金の給付額を増やすことに反対する人はいないはずだ。しかし、国会予算政策処の資料によれば、国民年金を生涯平均所得の50%とするためには、2060年までに年平均20兆ウォンが必要だ。「保険料を引き上げずに、年金を増やす」という主張は無責任な「悪魔の誘惑」にすぎない。政府と労働界はいずれも国民年金問題について、もっと率直かつ冷徹になるべきだ。

洪準基(ホン・ジュンギ)社会政策部記者

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