【萬物相】韓国の『ボヘミアン・ラプソディ』ブーム

【萬物相】韓国の『ボヘミアン・ラプソディ』ブーム

 1980年代にちょっと音楽を聞いていたという10代の若者たちは、間違いなく「レッド・ツェッペリン派」と「ディープ・パープル派」に分かれていた。ハードロックの二大バンドをそれぞれ信奉した世代で、互いに「自分たちの信奉するバンドの方がいい」と主張して言い合いになった。ところが、家に帰るとみんなクイーンを聞いた。クイーンは音楽はロックだがメロディーはポップなので歌いやすかった。そのクイーンの頂点にあるのがロックオペラ『ボヘミアン・ラプソディ』だ。

 この曲は1975年にリリースされたが、韓国では89年までに禁止曲になっていた。理由はよく分からない。「殺人を歌った歌詞のせいだ」という説や、「ボヘミアが当時共産国だったチェコの地名だから」という説などがある。禁止曲ならなおのこと何とかして聞こうとするものだ。海賊版LPやカセットテープ、音楽喫茶などから広まった。「ママ/人を殺してしまった」「道化師よ、ファンダンゴを踊ってくれるかい」「ガリレオ フィガロ」という要領を得ない歌詞は、当時も今もよく理解できないままだ。

 クイーンのボーカル、フレディ・マーキュリーを主人公にした映画『ボヘミアン・ラプソディ』が観客600万人を超えた。韓国映画『アジョシ』やハリウッド映画『ミッション・インポッシブル』に並ぶ水準だ。北米を除く全世界の興行成績を見ると、クイーンの故国イギリスが興行1位、韓国が2位だ。シンプルな音楽映画でもない、あるバンドの一代記を描いた自伝的映画がこのように大ヒットするのは異例だ。中年の観客の中には、映画を見ていて涙する人も多い。若かったころに聞いた曲を快適な映画館で、しかも素晴らしいサウンドで聞いて思い出に浸る。それにしても驚くべき興行成績だ。

 特定の作品やアーティストが特に韓国で人気を得る現象はこれまでも何度かあった。感性豊かにピアノを奏でるジョージ・ウィンストンや倉本裕基は本国では無名に近い。フランスの作家ベルナール・ウェルベルやイギリス在住のアラン・ド・ボトンは本国よりも韓国で人気が高い。ボヘミアン・ラプソディも韓国人の心の琴線に触れたようだ。「週末にほかにすることがなく、ちょうどライバルとなる映画もない」がヒットの理由とも言われている。間違った説明ではない。韓国映画の観客は延べ人数で年2億2000万人で、韓国人1人当たり4.3本見ている計算になる。日本(同1.4本)はもちろん、フランス(同3.9本)よりも多い。

 曲を絶対に広告に使用させないビートルズとは違い、クイーンは使用料さえ払えばいくらでも曲を使わせてくれる。広告を通じて曲を耳にした若い観客たちが「あれがクイーンだったのか」と気付いてこの映画にハマるという。だから、親子で一緒に映画館に来ることも多い。理由は何であれ、映画が親と子をつないでくれるのは久しぶりのことだ。

韓賢祐(ハン・ヒョンウ)論説委員

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