牡丹市場最後の食用犬肉業者「市と団体の圧力には耐えられなかった」

 ソウル畜産のシン・スンチョル代表(53)は、京畿道城南市牡丹市場に残る最後の食用犬解体業者だった。シンさんは最近、食肉解体施設を全て撤去した。城南市はメディアに「市場の近代化事業に拍車が掛かっている」とコメントした。

 シンさんは本紙との電話インタビューで「建築法違反などを理由に何度となく行政代執行に踏み切ろうとする城南市と私を大の敵とみなしている動物保護団体の圧力に、これ以上耐えることができなかった」と話した。シンさんは21歳で犬の食肉解体について学び、牡丹市場に腰を据えた。50カ所以上存在していた食肉解体業者は、食用犬肉に対する否定的な世論が高まりを見せたことで、昨年には22カ所にまで減少した。

 首都圏最大の食用犬肉流通団地である牡丹市場をターゲットにした動物保護団体からの苦情が相次いだ。城南市は昨年、市場の商人会に「食肉解体業を諦めれば、業種転換を支援する」と協約を結んだ。市の説得にシンさんの店を除いた21社がヘルスケアショップや飲食店に転業した。

 シンさんは今年7月、記者に会って「これまで税金をしっかりと納入し、母の家も購入し、息子をソウル大に送って国際弁護士に育てるなど、これらのプライドで生きてきた」と話した。さらに「法的根拠もなしにただ店を閉めろと言うため、到底受け入れることができなかった」と当時の苦しい事情に触れた。現行の畜産物衛生管理法では、犬は家畜に含まれないため、解体、流通、販売を規制する法的根拠は存在しない。

 すると市庁は、シンさんが店の前に幕を張った鉄製の「おり」が建築法違反と見なし、4回にわたって行政代執行の警告状を送り付け、2回にわたって強制撤去に踏み切った。12月6日には、京畿道特別司法警察が環境汚染と動物虐待などの疑いで店を押収捜索した。週末になると、動物保護団体が店の前にやって来て「息子は国際弁護士だというが、その父親は『犬白丁』(食用犬肉業者をさげすむ言葉)」と言い放った。

 シンさんは店の壁に「最後まで耐える者が勝利する」と書かれた貼り紙を貼り付け、市庁を相手取って訴訟も起こした。突然、食肉解体施設を撤去したとの知らせを受け、電話をかけてみたところ、シンさんは「商売をしようにも健康を害してしまってはどうにもならない」と言った。最近、甲状腺がんが再発したという。今回で3度目だ。妻のオ・ジョンオクさん(55)は、ノイローゼと対人恐怖症を訴えている。シンさんは「しばらくは解体された食用犬肉を売りながら、他の仕事を探してみるつもり」と悲しげに語った。

キム・スンジェ記者
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