【萬物相】金メダリスト沈錫希が体験した地獄

 選手にとってコーチとは一体いかなる存在であり、またなぜこのような事件が起こったのか。ある選手はコーチのことを「絶対者」と語る。一度選手の道に入れば勉強とは完全に一線を画すが、このような状況だと大会への出場や上の学校への進学、実業団チームに進む時など人生の岐路ではコーチの一言が大きく影響するという。また日常の練習から合宿に至るまで、二人はほぼ全ての時間を共に過ごす。一度嫌われたらそれで終わりだ。沈選手も「スポーツを続ける考えはないのかといつも脅迫された」と語っている。

 米ミシガン大学体操チームや米国代表で担当医を務めたラリー・ナサールはなんと30年にわたり女子選手たちに性的暴行を繰り返していた事実が明らかになり、昨年175年の懲役刑を受けた。ナサールから暴行を受けた選手たちが後に母親になり、勇気を持って証言台に立つまで、一連の問題は徹底して隠蔽(いんぺい)されていた。それまでナサールは米国体操界に大きく貢献した人物として一身に称賛を受けていた。しかしシモーン・バイルスら今の代表選手をはじめ元代表選手ら150人の証言が続いたことで真実は明らかになった。

 コーチと選手は時に主従関係のように見えることもある。ミー・トゥー運動によって多くの被害者が声を出しているが、スポーツ界ではまださほど広がっていない。大韓体育会(KOC)と文化体育観光部(省に相当)は金メダルや北朝鮮とのスポーツ交流以外の問題にはさほど関心がないようにも見える。沈選手が告白した今回の重大問題も一刻も早く事実関係を明らかにし、他にも被害者がいないかしっかりと調べなければならない。

閔鶴洙(ミン・ハクス)論説委員

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