「文在寅ケア」公表、今後5年で4兆円の支出増

 韓国政府は10日、今年から2023年までの5年間に健康保険の支出を41兆ウォン(約4兆円)以上増額するいわゆる「文在寅(ムン・ジェイン)ケア」の内容を公表した。文在寅ケアとはこれまで健康保険の対象とならなかった希少がんの治療薬、MRI(磁気共鳴画像装置)、入院時における2-3人の病室料金などを新たに保険対象とし、患者の負担軽減を目指す現政権の医療福祉政策のことだ。

 これが実現すれば患者にとってはただちに医療費の負担が軽くなり、すぐにでも大きな恩恵が受けられるが、急速に進む少子高齢化の流れに加え、健康保険支出まで雪だるま式に膨らむとの懸念も根強い。そのため最終的には逆に保険料負担の方が重くなるのは避けられない。

 保健福祉部(省に相当)は10日、これらを主な内容とする「健康保険総合計画」を発表した。2017年には医療機関での治療費のうち健康保険でカバーできる割合は62.7%だったが、これを2022年には70%にまで引き上げるという。

 財源はこれまで積み立ててきた健康保険財政積立金の一部取り崩しと、健康保険料の段階的な引き上げで、政府はこれだけで財源は十分賄えると説明している。昨年末の時点で健康保険財政積立金は20兆5000億ウォン(約2兆円)だった。政府は保険料率を2022年までに毎年3.49%ずつ引き上げ、23年からは上げ幅を3.2%とする計画だ。

 この政府の説明が正しければ、現政権の任期中は問題がない。しかしこの流れで行くと、次期政権の任期中となる2026年には保険料率が8.12%にまで上昇し、法律で定められた上限の8%を上回ってしまう。保険料率の上限は1999年に健康保険法が制定されてからこれまで一度も見直されていないが、これが見直されない限り解決の見通しはない。保健福祉部の関係者は「2022年までに健康保険財政に関する法律を見直す必要がある」と認めた上で「法律で定められた保険料率の上限引き上げも、その時に検討されるだろう」との見通しを示した。

 積立金を取り崩せば5年後の2023年には11兆ウォン(約1兆1000億円)にまで原資が減る。政府は「支出経費を抑えれば24年以降も積立金は10兆ウォン(約1兆円)台を維持できる」としているが、専門家は高齢化などを理由に政府の見通しの甘さを指摘している。

ホン・ジュンギ記者
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