【萬物相】「親を通報せよ」と教える韓国の人権教育

【萬物相】「親を通報せよ」と教える韓国の人権教育

 家父長制が色濃く残るインドでは、女の子たちは幼い頃から家事を受け持つ一方で、男の子たちは一切家事を手伝わない。娘たちは朝早く起きて水をくみに出掛け、火を起こしてはご飯を炊く。家事のために学校の宿題をする暇さえもないという。これと関連し、国連はインド社会に引き続き問題を提起している。女性が担当する家事を「代価のない労働」と規定し、これにより教育機会が剥奪されるのは人権侵害だと指摘する。しかし、インドの子どもたちに「親を通報せよ」とは教えない。それが解決策にはならないためだ。

 韓国の中学3年の社会科の教科書に「親が娘にだけ皿洗いをさせたり、子どもの電子メールを見たりした場合、人権委員会に通報」するよう書かれているという。あるPTA団体が「親のしつけを人権侵害と規定した」とし、裁判所に教科書の使用中止を求める申請を提出した。同ニュースに触れた視聴者たちは「ママだけがご飯を炊いても人権侵害、パパだけがお金を稼いできても人権侵害」「うちのしゅうとめも通報しなきゃ」など、皮肉るレスを幾つも付けたという。

 西洋の親たちは、子どもが幼い頃から家事をさせる。オーストラリアのある家庭教育団体は、子どもが言葉を聞き分けられるようになったら、おもちゃと本の整理からさせるよう促す。4歳が過ぎたら洗濯物を干したり取り込んだりするのを手伝うようにさせ、6歳からは自分が使った食器を流し台に持っていき、植木鉢に水をやらせるよう勧めている。もちろん息子と娘に同じように教え、両親も公平に分けて家事を行っている。仮に韓国の教科書を執筆した教師たちがこうした教育を意図していたとしても、「親を通報せよ」という教えは非常にばつが悪い。

 皿洗いをさせた父兄を子どもが人権委に通報すると、その家はどうなってしまうのか。親と子が平等で仲むつまじい家庭へと発展するのか。わずか数年前まで韓国の家庭では「フェチョリ(30センチほどの細い棒、これで子どもの足をたたく)教育」を当たり前と思ってきた。そのフェチョリが消えたのは、親たちの考えと文化に変化が生じたからであって、子どもによる通報が恐ろしかったからではない。一体何が原因で子どもたちをそのように教えるようになったのか理解できない。

 いつからか「人権」というカードを魔法のつえのように考える風潮がはびこり始めた。「性関係や妊娠、出産」に対する生徒指導も問題視する「学生人権条例」が出されるなど、今では人権を振りかざして親と子を加害者と被害者に分けようとする雰囲気だ。子どもの電子メールを読もうとする親を通報しなければならないとすれば、公務員たちの携帯電話を奪っていき、内容を見ようとする大統領府は同罪ではないのか。少なくとも皿洗いに対する人権について教えた教師ならば、正解もご存じのことだろう。

ハン・ヒョンウ論説委員
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