【萬物相】21世紀の「風水断脈説」

【萬物相】21世紀の「風水断脈説」

 日帝が民族の精気を抹殺しようと韓国各地の名山に「穴針」を打ち込んだという「風水侵略説」が、一時流行した。精気が集まる「つぼ」に鉄の杭を打ち込み、地脈を断とうとしたというのだ。風水侵略説は、ある日本の将軍が戦犯判決で処刑される直前に残した遺言から始まったという。「朝鮮の全域に鉄の杭を365本打ち込み、収奪した宝物を隠しておいた」という説だ。

 ある民間団体が1985年、民族の精気を復活させるとして北漢山の白雲台から1メートルほどの鉄の杭およそ20本を抜き、そのうちの一部を独立記念館に寄贈した。ところがこの鉄の杭は、「登山道の保守用」だという説明もある。1927年11月12日付のある新聞は「白雲台へ上る道に鉄の鎖を連ね、子どもでもちゃんと上がれるようになった」と記した。95年には韓国政府が鉄の杭の除去に乗り出し、韓国各地で鉄の杭が大挙して引き抜かれた。

 これらの鉄の杭は、「土地測量用」の可能性も高いという。鉄の杭が発見された地点を見ると、土地調査事業を行う際、三角測量のために表示木として打ち込んだ位置と大部分が一致するという。95年10月、時事雑誌に「測量のため山の頂上などに三角点を設置した」という当時の測量技師の証言が載った。

 今度は、ソウル市の報道資料に「風水断脈説」が登場した。ソウルの昌徳宮-苑南洞交差点を結ぶ栗谷路の拡張工事が9年を経て終了し、道路が開通した12月30日、ソウル市は資料を出して「栗谷路は、日帝が民族魂の抹殺政策に基づいて宗廟-昌慶宮を断絶させるため作った道路」だとした。道路一本が「民族魂」を抹殺したというのだ。前任の市長が推進していたこの工事を2013年に朴元淳(パク・ウォンスン)市長が大幅に変更した際も、ソウル市は「民族魂抹殺」を掲げた。この影響で、当初の計画より1.5メートル深いところに道路を引き、工法まで変えた。工事費は854億ウォン(現在のレートで約81億円。以下同じ)と倍くらいに膨れ上がり、完工の時期も15年から4年遅れた。21世紀に風水地理が市民の税金400億ウォン(約38億円)を飲み込んだ。

 文化財庁は昨年、ソウルの徳寿宮裏にある米国大使公邸とセン源殿(センは玉偏に睿)跡を結ぶ120メートルの「高宗の道」を整備した。高宗が1896年の俄館播遷の際に用いた道を復元するとして、誰が作ったのかも明らかでない1952年の地図を根拠に「高宗の道」を作った。工事が終わってから1年が過ぎたが、「ありもしなかった道」だという批判は依然として存在する。韓国政府は国民の税金を軽く考え、ソウル市は市民の税金に染みた汗を見ていない。

朴恩鎬(パク・ウンホ)論説委員

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