【社説】文大統領指示の捜査は例外なく無罪、受けた苦痛に一言も謝罪なし

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領が2年前「前政権における司法壟断(ろうだん、利益を独占すること)疑惑を究明しなければならない」と注文し、本格的な捜査に着手した司法積弊関連の判決が全て無罪となっている。元大法院(最高裁に相当)首席裁判研究官に続いて現職判事3人の機密流出容疑について無罪判決が出たのに続き、裁判への介入容疑を受けていた判事も無罪になった。最初から実体が不透明な事件だった。ところが文大統領は捜査が始まる前から「憲法破壊」などと言い、最初から「有罪」宣言を行っていた。

 それだけではない。文大統領が具体的に捜査を指示した事件はほぼ例外なく無罪判決が下されている。大統領就任から2カ月後、「防衛産業不正剔抉(てっけつ)」を指示して始まった韓国航空宇宙産業への捜査は主な容疑について無罪が宣告された。「根こそぎ取り除け」という大統領の指示による朴賛珠(パク・チャンジュ)元陸軍大将への捜査もパワハラは早くから容疑なしとされ、別件の贈収賄に対する裁判も無罪となった。「江原ランド採用不正外圧疑惑を厳正に究明せよ」という大統領の指示により、検察から2年半にわたり3回捜査を受けた権性東(クォン・ソンドン)自由韓国党議員も無罪が宣告された。大統領がインド出張中に現地で特別捜査団を立ち上げ特命捜査を指示したキャンドル集会戒厳令文書も、軍捜査団が90カ所を家宅捜索し、204人から事情聴取を行ったが、全員が容疑なしあるいは無罪処分を受けた。

 戒厳軍が戦車でキャンドル集会を鎮圧しようとしたかのようにでっち上げられた事件は、このように何の実体もなかったのだ。大統領が東南アジア歴訪を終えて戻ると同時に「公訴時効が過ぎた問題も解明せよ」と超法規的な指示まで下した金学義(キム・ハクウィ)元法務部(省に相当)次官事件、チャン・ジャヨン事件、クラブ・バーニングサン事件もやはり何の結果も出なかった。大統領の命令によって無理な捜査が行われ、その過程で苦しめられた人の中には自らの命を絶ち、あるいは衝撃で死別するという悲劇も相次いだ。

 歴代の大統領も不正剔抉や厳罰などの指針を下したことはあるが、文大統領のようにこれほど多くの個別事件で捜査を指示したケースはない。ところがその事件についてどれも同じように容疑なし、無罪の結論が出ているのだ。それでも大統領からは自らの指示について一言の謝罪もない。今浮上しているのは、その文大統領自ら選挙工作や不正工作者を擁護するという違法行為をしたという容疑だ。

<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) Chosunonline.com>
関連ニュース
あわせて読みたい