【社説】釜山市長の醜い退場と総選挙用「辞任公正証書」

 釜山市の呉巨敦(オ・ゴドン)市長が今月初め、部下の女性職員にセクハラをした事実が明らかになり、23日に辞任した。業務のためとして呼びつけ、自らの執務室でセクハラをしたというのだ。呉市長は「不必要な身体接触」と説明したが、要するに露骨なセクハラだった。呉市長は釜山で共に民主党所属として初めて市長に当選したが、2年の任期を満たすことなく辞任することになった。呉市長は6カ月前から別の女性職員へのセクハラ疑惑も持ち上がっていた。本人は「フェイクニュース」として否定したが、今回の問題を見ると信じられない。追加の調査が必要だろう。ある市民団体は「会食の席で、呉市長が女性を両側に座らせるのを見たときから予見できていた」とコメントしている。

 辞任の過程も納得しがたい。呉市長は被害者に「総選挙を目前に控えたデリケートな状況なので、総選挙が終わってから辞任する」と提案し、辞任確認書を書いて公証まで受けたという。この「辞任公正証書」というのは、ありとあらゆることが起こる政治の世界でさえ初めて聞く話だ。被害者から通報を受けた釜山性暴力相談所はセクハラの事実を確認したが、辞任を総選挙後に先送りすることを受け入れたという。野党所属の市長が同じことをしていれば、彼らは目をつむっていただろうか。共に民主党はこの日、「呉市長を除名する」とする一方「セクハラの事実は知らなかったし、相談も受けていない」とコメントした。しかし総選挙を目前に控えセクハラで辞任に追い込まれるという重大問題を、党の執行部が知らされていなかったとは常識的に考えて到底信じがたい。

 2018年に一気に広まった「ミートゥー運動」をきっかけに、権力による性暴力に対する暴露と処罰が相次いだ。政界だけでなく法曹界、文化芸術、スポーツ、宗教界などで表向きは「正義」「民主」「人権」「女性」を叫びながら、裏では性暴力に手を染める人間たちの偽善と素顔が明らかになった。呉市長の事件はこの権力型の性暴力が今も続いている事実を改めて知らせるものとなった。最近は共に民主党が総選挙用に迎え入れようとした人物がミートゥーの暴露で出馬を放棄し、また同党のある選挙区当選者は女性を侮辱するポッドキャストに繰り返し出演していたことが明らかになっている。

 呉市長の辞任により、釜山は補欠選挙が実施される来年4月まで市長権限代行体制が維持され、市政の空白が避けられなくなった。これに先立ち、政権の最高実力者たちと非常に親しいとされた青瓦台(韓国大統領府)出身の釜山経済副市長も収賄罪で辞任した。今度は市長までセクハラで辞任することになり、その被害はそっくりそのまま釜山市民がかぶることになった。

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