突然態度が変わった金与正氏、南北平和ムードの主役から破局の先鋒に

韓半島安保危機
連日のように韓国を非難する談話を発表
内外にナンバー2として刻印

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の妹である金与正(キム・ヨジョン)労働党第1副部長が連日、韓国に向けて非難と暴言を繰り返すことで「悪役」に豹変(ひょうへん)した。金与正氏は2018年以降、南北対話局面では柔和なメッセンジャーの役割を果たしてきた。その金与正氏が突然変わったのは、金正恩氏と役割を分担すると同時に、後継者として内外にその立場と指導力を確かなものにするためとの見方が出ている。

 金与正氏はこれまでソフトなイメージを演出してきた。金与正氏は2018年2月の平昌冬季オリンピックの際には金正恩氏の特使として来韓した。2泊3日の滞在期間中に文在寅(ムン・ジェイン)大統領と4回会ったのをはじめとして、イム・ジョンソク青瓦台(韓国大統領府)秘書室長(当時)など政権の実力者らと親交を深めた。また数々のイベントで金与正氏はそのソフトなマナーで雰囲気を和らげ、さらに南北対話、米朝対話の舞台にも登場し、「平和プロセスのメッセンジャー」としての役割を果たしてきた。

【写真】 韓国政府を揺さぶる金与正氏のさまざまな表情

 ところが金与正氏は最近、対南事業総括役となってからは連日のように青瓦台を非難する談話を出し続けている。専門家は「金正恩氏が金与正氏を通じて自らの考えを伝えている」とみている。さらに金与正氏が前面に登場することで、「党中央」という呼称もよく使うようになった。金与正氏の対南談話直後に限ってこの言葉は党機関紙に3回連続で使われた。「党中央」とは過去に北朝鮮が後継者を意味する言葉としてよく使っていた。

 専門家は「金与正氏はナンバー2に近い地位に上ったが、まだ32歳と若い。しかも北朝鮮の家父長制が女性を最高指導者として受け入れるか分からない」との見方を示した。そのため金与正氏は連日のように韓国に対して強硬なメッセージを出し、指導力の確保に乗り出しているとの分析も出ている。金正恩氏と金与正氏が「グッドコップ・バッドコップ戦術(厳しいことを言う悪役の警察官と同情的な態度の役の警察官がチームを組み、良い警察官の提案を受け入れさせる交渉術)」を駆使している印象も深い。今年3月に金与正氏が青瓦台を非難する談話を出した翌日、金正恩氏が文大統領に親書を送り、水位の調整を行った事例もある。

イ・スルビ記者
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