【朝鮮日報コラム】「賃貸保証金のせいで死んでしまいたい」

【朝鮮日報コラム】「賃貸保証金のせいで死んでしまいたい」

 最近読者から抗議のメールが寄せられた。ソウル市内のマンションの賃貸保証金、いわゆる伝貰(チョンセ、一定額の保証金を大家に預けて家を借りる不動産契約で、引っ越しの際は保証金が全額返ってくる)代がここ数カ月間で数億ウォン(数千万円)も引き上がった上、「賃貸借3法」が成立すれば、さらに上昇する恐れが高いという記事に対して抗議する内容だった。読者は「伝貰の契約更新を目前に控えているが、大家が伝貰代を大幅に引き上げると言ったら、どう責任を取るつもりだ」とし「最近伝貰について考えると夜も眠れない。どうにかしてほしい」と苦しい胸中を語った。

 文在寅(ムン・ジェイン)政権は発足当初から20回以上も不動産対策を打ち出してきたものの、ソウル市内の住宅価格は驚くほどに上昇した。無住宅者は剥奪感に苦しみ、嘆いている。ところが伝貰代までが高騰すると、これは心理的な水準にとどまらず、生活苦へとつながっていく。借金をしてでも伝貰代を工面できなければ、子どもの転校を覚悟して自宅を郊外に移すか、あるいは引っ越しせずに月決めの家賃を支払わなければならなくなる。

 政府は住宅の値段が急騰する中、「それでも伝貰市場はうまく管理されている」と発表してきた。実際、文在寅政権発足後の2年間にわたって、ソウル市内のマンションの伝貰代は0.7%低下し、安定した水準を維持してきた。しかし、ここ1年間で3.26%も上昇し、「伝貰大乱」の危機に直面している。与党は「江南のマンション価格を安定」させるために用いた、いずれも失敗に終わった規制一辺倒の「対症療法」を伝貰代の安定に向け再活用しようとしている。

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 与党が発議した「賃貸借3法」の中には、伝貰代を事実上政府が定めることや、契約期間の無期限延長なども盛り込まれており、違憲的要素も見え隠れする。しかし、巨大与党の勢いは衰えることを知らない。違憲論議にもかかわらず伝貰代を安定させることができるなら幸いだが、専門家らは首を横に振る。市場に逆行する政策が市場でなぜ正しく作動しないのか、政府はまだ気付いていない、と批判の声が上がっている。

 現政権発足の初期、伝貰代がどのようにして安定したのかを見れば、おのずとヒントは見えてくる。同政権の発足初期、ソウル市内では年平均で4万世帯がマンションに入居した。これは、専門家らが適正供給規模と見ている年間3万世帯を超える供給規模だ。過去の政権で再建築、再開発を活性化させた効果が時差を置いて現れたのだ。新築マンションが多いので伝貰物件の供給も十分だったし、価格も安定していた。

 一方、現政権は再建築、再開発に対して大幅な規制を継続したことで、来年からソウル市内のマンションへの入居者数は半減することが予想されている。その後も「供給不足」がしばらく続く見通しだ。多住宅者への税負担を増やし、1世帯1住宅者に対し持ち家での居住義務を強化することも、全て伝貰物件の供給を減らす政策だ。住宅価格の急騰を「投機需要のせい」とするのと同じように、伝貰代の急騰を「大家のせい」としてしまえば、市場がどのように反応するかは火を見るよりも明らかだが、現政権は分かっていないようだ。

 伝貰代の工面に悩み苦しんだある30代の男性が、結婚直後に自殺した事件が発生したのが10年前のことだ。現在のような政権なら、こうした悲劇が再び発生してもおかしくないと思えてならない。

チョン・スンウ産業1部記者

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