【社説】北に銃殺された公務員の兄「大韓民国で起きた蛮行の方がむごい」

【社説】北に銃殺された公務員の兄「大韓民国で起きた蛮行の方がむごい」

 北朝鮮軍に銃殺された韓国政府職員の兄、イ・レジンさんが「弟が死んでいく間に、この政府は何をしていたのか」と絶叫し「弟を(越北者と断定して)名誉殺人するな」と訴えた。国政監査で訴えるはずの内容だったが、与党の反対で証人として採択されなかったため、野党が行った「場外国政監査」に参加するしかなかった。イさんは、韓国政府は弟が失踪した直後から北朝鮮との通信が可能だったにもかかわらず、救助を要請しなかった理由を問いただした。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長と親書をやりとりするルートが存在し、また国際商船共通網を使うこともできたが、なぜ何もせず、救助の「ゴールデンタイム」を逃したのかということだ。

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 イさんは、韓国政府が「断片的な諜報(ちょうほう)」に基づいて越北と断定した理由についても問いただした。海洋警察は甲板の上に残されたスリッパを越北の証拠としているが、同僚は『(犠牲になった)イさんのものではなさそうだ』と証言している。同僚たちは「物理的に(越北は)不可能だ」という趣旨の陳述も行ったが、海洋警察はこれを公表していない。韓国政府と与党は合同参謀本部の間諜記録に「越北を意味する単語があった」と主張している。この記録を遺族だけにでも示せば疑問は解消するはずだが、政府は一切示そうとしない。その理由は何か。

 韓国政府は「北朝鮮による射殺・焼却を確認した」と一度は発表したが、北朝鮮が「焼却していない」と主張すると「断片的な諜報」との理由で自らこれを否定しようとした。北朝鮮にとって不利になれば「断片的な諜報」になるのだろうか。ある与党議員は「越北は重大犯罪のため、射殺することもあり得る」と発言した。自国民を犯罪者扱いするだけでなく、北朝鮮の蛮行まで隠そうとしているのだ。与党の熱烈な支持層は遺族らに「越北が自慢か」「民弊(国民に害を及ぼす)家族」などとインターネット上で攻撃している。遺族としてはいかに切羽詰まったか、結局韓国政府ではなく国連に陳情書を送った。政府職員の兄は「北朝鮮の蛮行よりも、大韓民国で起こっている蛮行の方がもっとひどい」と述べたが、まさにその言葉通りのことが起こっている。

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