原発事故に対応するメインのロボットが「アームストロング」だ。アームストロングは人間のように2本の腕を持ち、一つの腕で100キロ、合計200キロを持ち上げることができる。強力なパワーでドアを破ったり、セメントの塊や廃棄物が入ったドラム缶も撤去できる。さらに消火剤を噴射し、パイプを組み立て、バルブを回すといった細かい作業も可能だ。ストローや小さいボルト、サッカーボールのように弾力のある物体もつまみ上げられるよう設計されている。またロボット部品の中で脆弱(ぜいじゃく)な部分は鉛で遮蔽(しゃへい)しているため、強い放射線にも耐えられる。アームストロングは現在、1時間当たり500シーベルト(放射線の単位)に耐えられるが、今後は1000シーベルトまで耐えられるようにするのが目標だ。日本の福島原発事故当時、建屋の内部はおよそ650シーベルトに達していた。
■2016年から6回にわたり訓練
原子力研究院は毎年2回以上、さまざまなシナリオで放射能防災訓練を行っている。 2016年から6回にわたり実際の訓練にロボットを投入し、その実効性を検証しながら改良を続けてきた。昨年8月と10月の訓練では、ティレムが建屋内部に入って現場の状況を転送し、アームストロングがウレタンフォームを噴射して放射性物質の漏れ出す建屋の出入り口を密閉する作業にも成功した。研究に取り組むスタッフたちによると、放射性物質の密閉訓練は海外でもまだ行われていないという。
特に昨年の訓練では、ロボット専用の映像通信サーバーを構築することで改良が大きく進んだ。無線通信で制御し、データを送受信するロボットの特性上、サイバー・セキュリティーは重要な問題になるからだ。原子力研究院ロボット応用研究部のチョン・ギョンミン部長は「今後は原発内部の高い構造物にも対応できるよう、より大型のロボットやドローンを開発することが目標」と語る。原子力研究院の無人防災システムに使用されるロボットは原発はもちろん、それ以外の災害や事故現場でも幅広く活用できそうだ。市場調査会社モルドールインテリジェンスによると、世界の防災ロボット市場は昨年の時点で22億7000万ドル(約2360億円)規模に達しており、毎年8%のペースで成長を続けているという。2025年には35億9000万ドル(3840億円)にまで拡大する見通しだ。
ユ・ジハン記者