これについてはバイデン政権が人権問題の実態告発にとどまらず、北朝鮮による人権じゅうりんを体系的に記録し、後に加害者を処罰するための証拠として活用する考えがあるとの見方もある。かつて旧西ドイツは人権犯罪を処罰するため中央犯罪記録保存所を立ち上げ、ベルリンの壁が崩壊するまでに4万件以上の人権侵害記録を収集していた。
これとは対照的に韓国政府はすでに設立されている北朝鮮人権侵害記録機関を形骸化させてしまった。2016年に公布された北朝鮮人権法に基づき、法務部(省に相当)内には北朝鮮人権記録保存所が設置されている。これは北朝鮮で人権侵害を行った犯罪者を統一後に刑事処罰するための準備を行うことが目的で、一時は2-4人の検事が派遣されていた。ところが2019年以降、検事たちは全て本来の職務に戻った。刑事処罰のために立ち上げられた機関から法律の専門家である検事を外したのだ。また統一部の李仁栄(イ・インヨン)長官は今年2月、北朝鮮人権記録の公開について「記録が実際のことか、あるいは(脱北者の)一方的な考えかどうかについての確認や検証が足りない」と述べ、脱北者の証言を疑問視する考えを示していた。