【萬物相】「申栄福体」という不条理劇

【萬物相】「申栄福体」という不条理劇

 毛沢東は書道家としても有名だった。文字を少し傾けて、左から右へ上がり気味にする彼の書体を「毛体」というが、最高権力者に一筆書いてもらおうと、中国全土から人々が集まった。各大学は、校名を書いてもらって正門に掲げた。拒否されたら、毛沢東の文字を集めてでも名板に記した。清華大学、武漢大学など、およそ100校に上る。文化大革命の災厄の後、しばらく関心を向けられてこなかったが、毛沢東のような絶対権力者になりたい習近平主席がこれを模倣し、再び人気を集めている。中国のポータルサイトには、どんな文字でも毛体に変えてくれるプログラムまで登場した。

 書体が権力になる国はほかにもある。北朝鮮だ。金氏王朝の太陽書体(金日成〈キム・イルソン〉)、白頭山書体(金正日〈キム・ジョンイル〉)、ヘバル書体(ヘバルとは日光のこと。金正日〈キム・ジョンイル〉の母親・金正淑〈キム・ジョンスク〉)を「白頭山3大将軍名筆体」という。2018年に青瓦台を訪れた金与正(キム・ヨジョン)が芳名録に残した文字は、最初の子音を非正常なほど大きく書き、文字の横線を右上45度方向に傾けていた。筆跡鑑定家らは「他人の上に君臨する人物の内面を表している書体」と分析した。

 韓国で権力になった書体は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が好むという申栄福体だろう。趙廷来(チョ・ジョンレ)の長編『漢江』の表紙、孫恵園(ソン・ヘウォン)元議員がデザインした焼酎「初めてのように」、文大統領の大統領選スローガン「人が先だ」、文大統領が青瓦台の秘書官に見せた「春風秋霜」の額…。これらの文字は全て、申栄福・元聖公会大学教授の書体だ。

■「2020年腐敗認識指数」韓国33位、北朝鮮170位、日本は?

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