鴨緑江の川沿いに立つ25階建てのビルは、遠くから見るとまぶしく輝いていた。しかし、近づくにつれて歯が抜けたようにまばらな窓ガラスや赤くさびた鉄製の柱が見えてきた。「国門ビルディング」という名前が表すように、このビルは中国・遼寧省丹東市と北朝鮮の新義州を結ぶ鴨緑江大橋の「大門」のような建物だが、完工から7年が過ぎた今、徐々に廃墟化が進んでいた。工事代金を支払えず、200億ウォン(約19億円)台の訴訟も起きている状態だ。
建設費だけで500億ウォン(約47億円)近く投じられたオフィスビルが捨てられたのは、北朝鮮が7年にわたって鴨緑江大橋の開通を遅らせているからだ。2009年に訪朝した当時の温家宝・中国首相の提案で建設された全長3キロのこの橋は、将来の中朝経済協力の象徴と考えられた。最低でも4000億ウォン(約380億円)が投じられたといわれ、14年に完工したが、北朝鮮側の連結道路の工事が遅延。19年に中国の習近平国家主席が訪朝した後、昨年になって北朝鮮側が連結道路を建設したが、北朝鮮側の税関など貿易に必要な施設はいまだに建設されていない。鴨緑江大橋とつながっているという「プレミアム」が売りだった国門ビルも、オープンできないまま放置されている。
ビルのオーナーは丹東を代表する自動車企業、曙光汽車集団の系列会社だ。中国の裁判所の資料によると、同社は工事費のうち250億ウォン(約23億6400万円)を支払えず、建設会社から提訴された。曙光グループは北朝鮮に自動車、部品を輸出していたが、売上不振と投資の失敗などによって株価が2017年に比べて60%以上も下落した。ある事業家は、国門ビルディングについて「対北交易都市・丹東の悲劇を示す象徴」と話した。
中国の代表的な北朝鮮との交易都市である丹東の経済が、北朝鮮の国境封鎖によって衰退している。丹東は中朝交易の70%を担い、北朝鮮の労働者を雇用して衣類や家電製品などを生産してきた。しかし、北朝鮮の核実験によって国連の対北朝鮮制裁が強化された上、北朝鮮が昨年2月初めに丹東と接する国境を完全に封鎖したことで、丹東は打撃を受けている。