韓国政府が急加速「電気自動車の生産450万台」…自動車業界は足元に火

2030年まで「炭素40%削減」を目標、韓国国内の「電気自動車」生産能力は300万台にとどまる

 韓国の自動車業界が政府の温室効果ガス削減目標値の上方修正に戸惑いを隠せずにいる。政府が2030年の温室効果ガス削減目標値を従来の26.3%から40%に引き上げ、30年の政府の電気自動車累積普及目標値もこれまでの385万台から450万台に引き上げたためだ。

【コラム】再評価されるトヨタのハイブリッド戦略

 問題は、韓国自動車業界の電気自動車普及能力が政府の目標値にはるかに及ばないということだ。韓国自動車産業協会が最近、国内自動車メーカーの電気自動車生産計画をまとめた結果、現代自、起亜自、双竜自が2030年までに普及可能な電気自動車の台数は300万台水準にとどまることが分かった。2030年だけで72万台を普及しなければならないが、同年の国内企業の普及能力は40万台水準にとどまっている。特に、韓国GMとルノーサムスンは、2025年までに国内で電気自動車を生産する計画がなく、その後の計画も不透明だ。鄭晩基(チョン・マンギ)自動車産業協会長は「政府が立てた目標値を達成するためには、少なくとも150万台は輸入車に依存しなければならない状況」と述べた。

■準備が整っていない部品業界

 韓国国内の部品メーカー各社の電気自動車への転換準備が遅れていることも、足かせとなっている。例えば、中堅自動車部品メーカーのA社は現在、9000億ウォン(約870億円)台の売り上げの100%をエンジンの付属部品から賄っている。電気自動車関連の新事業アイテムを求めて研究開発を行ってはいるものの、商用化までには8年以上かかるものとみている。A社の役員は「新しい製品の生産工程を開発して設備を確保し、信頼度検査を終えて製品を発売するには、少なくとも8-10年はかかる」とし「営業利益率は3%程度だが、売り上げの5%を研究開発に回さなければ達成できない目標」と話す。自動車研究院によると、韓国自動車業界の1次・2次部品メーカー約4500社のうち、電気自動車などエコカー関連部品を製造できるメーカーは全体の5%(約230社)にすぎない。米自動車部品メーカーのうち、エコカー関連の部品メーカーが20%(5700社中1200社)を占めているのと比べるとまだまだ足りない。

 自動車産業協会が最近行ったアンケート調査の結果によると、韓国国内の部品メーカーの大半(81%)は、未来自動車の研究開発に投資する資金が売り上げの5%未満であることが分かった。1次部品メーカー「ダソン」のムン・スン代表は「これほど短期間に電気自動車に転換すれば、準備できていない部品メーカーが倒産に追い込まれる恐れもある」とし「部品のサプライチェーンが崩れれば部品調達コストが上昇し、結局自動車メーカーと消費者が被害に遭うことになる」と深刻さに触れた。

■雇用減少、配置転換も問題

 電気自動車に急転換することで雇用も急激に減少する恐れが高いのも事実だ。特にエンジン、トランスミッション、パワートレインなど内燃機関車関連の人材は職場を追われる。自動車産業協会によると、2019年現在で韓国の自動車製造関連メーカーは4514社で、33万6000人が携わっている。内燃機関車の生産を中止すれば、このうち30%を占めるエンジン・動力装置メーカーの1377社の需要がなくなり、8万1000人の雇用が危機に直面する。

 世界的な自動車メーカー各社が、従来の内燃機関車工場をバッテリーや電気自動車工場へと転換し、人員構造の見直しを図っているが、韓国国内の自動車業界は遅れを取っている。GM(ゼネラルモーターズ)は、できる限り人員削減を行った後、残りの人員は再教育する方法で、ミシガン州のハムトラミック工場を電気自動車工場へと転換するほか、オハイオ州のローズタウン工場は、バッテリーセル工場へと転換している最中だ。大徳大学のイ・ホグン教授は「電気自動車の普及はサプライチェーンと雇用問題だけでなく、インフラ構築や新再生エネルギーへの転換率などを全て考慮しなければならない」とした上で「現実を考慮せずに立てた目標値は空念仏にとどまる恐れが高い」と警鐘を鳴らした。

リュ・ジョン記者

<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) Chosunonline.com>
関連ニュース
あわせて読みたい