マスク7000万枚を配った「寄付天使」、メーカーには代金未払いだった /ソウル

ソウル市など約500カ所にマスク配った「寄付天使」の裏の顔
輸出用に数十億枚契約、寄付用マスクを先に納品させる
全国30社余りの製造会社が数十億ウォンの被害…警察、私益を手にしたか捜査へ
輸出会社代表「代金支払い遅れただけ」

 韓国の自治体・韓国軍部隊・社会福祉施設など全国で約500カ所にマスク7000万枚を寄付し、「寄付天使」と呼ばれていた輸出会社の代表が詐欺の疑いで告訴され、警察の捜査を受けていることが確認された。マスク供給過剰で販路に困っていた製造会社を訪ねて行き、「海外輸出への道を開いてやる」と言って、安価でマスクを先に入手して代金を支払わなかった容疑が持たれている。ソウル水西警察署は11日、「マスク製造会社2社からの告訴状を受け、W社のパク代表 (76)を立件し、捜査中だ」と明らかにした。

14億ウォン寄付すると言っていたチョ・グク「金は全部なくなった」

 警察と被害に遭った会社によると、パク代表は今年4月、京畿道高陽市にあるマスク製造会社代表A氏に「北朝鮮・中国向けシルクロード事業を一緒にやろう」と言って近づいたとのことだ。当時A氏の工場にあったマスク在庫5000万枚を寄付名目で安く購入し、後にデンタルマスク50億枚を注文するという提案だった。中国・北朝鮮への販路を開拓してやると言う一方で、「ほかの取引先との契約をすべて切れ」とも要求したという。これに応じたA氏は今年5月までにマスク4800万枚をパク代表に渡した。だが、代金の支払い日だった6月20日を過ぎ、現在までA氏は代金約26億ウォン(約2億5000万円)を一銭も受け取れていない。約束したマスク50億枚の生産契約金も同じだ。A氏側は「代金の支払いが先延ばしとなるうちに、すべての取引先に取引関係を切られ、現在破産の危機にひんしている」として、7月にパク代表を警察に告訴した。

 高陽市にある別のマスク製造会社の代表B氏も同様の被害を受けたとして告訴状を提出した。年間マスク10億枚を納品すると約束し、寄付目的のマスク2000万枚を安い価格で渡したが、まだ代金を受け取っていないというのがB氏側の主張だ。京畿道華城市のある企業は今年6月、マスク51万枚を渡したが、まだ代金1億7000万ウォン(約1600万円)余りを受け取れず、破産手続きを取っているという。パク代表が要求した生産設備を整えるため、数億ウォン(数千万円)を投資して被害に遭った企業もある。現在、京畿道華城市、釜山市、慶尚南道金海市、全羅北道益山などで告訴を準備しているマスク製造会社だけで少なくとも30カ社以上あると伝えられている。

 被害に遭った会社側は「パク代表は米国企業と締結した契約書まで見せ、マスクを含む防疫用品を海外に輸出できる確実な販路があると言って接近してきた」と主張する。パク代表はマスク工場を回って、「世界84カ国への輸出販路があり、マスクを1800億-2000億枚まで輸出できる」と公言していたとのことだ。マスク業界は当時、供給過剰状態だったため、製造会社は「在庫をすべて引き取り、今後も数億枚注文する」というパク代表の提案を断れなかったという。しかし、製造会社側は「実際の輸出はなく、マスクを納品しても代金が支払われていないため、被害額だけで最低70億ウォン(約6億7000万円)に達する」と主張している。

 パク代表はこのように納品されたマスクを今年初めから各所に寄付し、「マスク寄付天使」と呼ばれて有名になった。今年6月にはソウル市にマスク1000万枚を寄付し、呉世勲(オ・セフン)市長と一緒に記念写真を撮ったこともある。江原道、京畿道水原市、忠清南道論山市などにも寄付した。マスク寄付を理由に、ある学会から「社会貢献経営大賞」などを受賞している。パク代表は自身が創設した各種財団や企業で「総裁」という役職を使っていた。今年9月には自身が主催した貿易フェアに参加した企画会社に契約代金を払わず、詐欺罪で執行猶予付きの有罪判決を受けている。

 パク代表は本紙の電話取材に「代金の支払いが遅れたことは認めるが、11月末までには問題を解決できる」「海外の輸出企業と新たな契約書を作成し、今月25日ごろ信用状を受け取る予定だ」と主張した。しかし、被害を訴えている複数のマスク製造会社は「同じ言葉でなだめて、代金支払いを延期してもう半年以上過ぎた」と話す。警察側は「現在、告訴人の事情聴取を終えた状態だ。近くパク代表に出頭を求めて、事件の経緯や私的な利益としての詐取がないかどうかなどを取り調べる方針だ」と明らかにした。

キム・ドンヒョン記者、カン・ウリャン記者

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