【独自】鉄鋼スラグ浸出水の官民合同実験、立ち会った市民団体に測定器の故障を暴かれた全羅北道環境庁

 「環境部は故障した測定器を持ってきて実験結果を堂々と捏造(ねつぞう)してもいいのですか」

 全羅北道群山市の陸上太陽光発電第2・第3区域の工事現場で10月25日に騒動が起こった。官民合同で行われた太陽光発電施設の工事現場で鉄鋼スラグ(製錬かす)浸出水の実験が行われた際、政府関係者と市民団体の間で怒号が飛び交ったのだ。合同点検団はこの日、工事現場で採取した鉄鋼スラグ浸出水をビーカーに入れ、pH濃度を測定した。鉄鋼スラグが敷かれた地域で強いアルカリ性物質が検出されないか確認するためだった。全羅北道地方環境庁が直接持参したpH測定器で測定を行ったところ、数値は中性を示す7が出た。すると環境庁職員と建設会社から「正常だ」という声が上がった。

【写真】測定器の故障、本当に知らなかったの?

 これに対して調査に立ち会った市民団体の代表が「結果がおかしい」としてポケットからリトマス試験紙を取り出しビーカーに入れた。予定になかった実験だった。中性であれば浅緑のリトマス紙は変化しないはずだが、紙は浸出水に触れると同時に強いアルカリ性を示す濃い紫に変わった。「政府は目の前で詐欺をして見つかった」「リトマス試験紙がなければだまされるところだった」など批判の声が相次いだ。環境庁は「測定器が故障していたようだ」と後から過ちを認めた。

 産業廃棄物の鉄鋼スラグは今年4月から3.6平方キロ(約109万坪)のセマングム陸上太陽光発電施設敷地内の35キロの道路に約42万トンが敷かれた。「これらのスラグは屋外にそのまま露出しているため、有害物質の流出が懸念される」とする本紙10月28日付の報道を受け、環境部(省に相当)などの政府機関は「有害性があるかどうか徹底して調査を行いたい」との考えを示した。この日初めて行われた官民による合同点検には環境部、全羅北道環境庁、国立環境科学院、群山市、セマングム開発庁などの政府機関や太陽光発電事業者、廃棄物処理業者、市民団体の関係者など30人以上が参加した。ところがその場に故障した測定器を持参していた事実が発覚し、現場では何もできないまま点検は終わった。

 干潟に造成した敷地に300万メガワット級の太陽光発電所を建設するこの事業は今年4月から工事が始まった。工事現場の道路建設には当初リサイクルされたコンクリートや砂利などを敷くことになっていたが、それが突然材料が鉄鋼スラグに変更となり、環境汚染への懸念が高まった。スラグは道路建設の副材料としてよく使われるが、雨や雪、地下水などに触れると有害物質を出すため、浸出水を出さないためにはアスファルトやセメントなどを使った仕上げの作業が必要になる。ところがセマングムの工事現場では数カ月にわたりこれらの作業は行われなかった。当局は問題を一定部分で認めてはいるが、セマングム開発庁は「鉄鋼スラグは環境に優しい材料だ」と主張している。

 セマングムでは別の環境汚染への懸念も浮上している。この地域の産業団地などから出る汚染物質を浄化する群山公共下水処理場では「浄化用微生物」の大量死が今年だけですでに数回確認されているのだ。高濃度の毒性物質が下水処理場に流れ込んだことが原因だ。韓国の保守系野党・国民の力の尹永碩(ユン・ヨンソク)議員を通じて全羅北道から入手した資料「郡山下水処理施設重金属分析」によると、今年8月に実施された「定期スラッジ(下水処理や浄水の際に出る沈殿物)検査」では基準値に比べて2-5倍以上の鉛、水銀、ヒ素などが下水処理場で検出された。浄化用微生物はこれら毒性物質も浄化するが、毒性物質の濃度があまり濃かったため微生物が大量死したのだ。群山市と環境当局は7カ月にわたりこの毒性物質がどこから流れ込んだか把握もできていない。

 これらの問題が発生したのは陸上太陽光発電施設敷地内の道路建設で鉄鋼スラグの使用が始まった今年4月からだった。群山市は群山産業団地内の工場などが下水や廃棄物などを処理する際に事前に重金属などの有害物質を除去する前処理をせず、工業廃水を無断で放流したとみて原因を調べているが、それも五里霧中状態だ。群山市は「疑わしい事業場を訪れ管路の調査も地道に行っているが、今のところ重金属を排出した工場を突き止めることはできていない」と説明した。中央大学のパク・キュホン教授は「地方自治体が原因究明に積極的でないことで被害が広がっている」と指摘した。

パク・サンヒョン記者

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  • ▲セマングム陸上太陽光発電第3区域(全羅北道群山市内草洞)の工事現場。10月25日撮影。/キム・ヨングン記者
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