ED治療薬の「シルデナフィル」成分、アルツハイマー型認知症の発病リスクを抑える効果を確認(下)

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 そして、米国FDAが許可した治療剤1608種類を対象に、コンピューターで両方のタンパク質が重なる場所に効果がある薬物を探した。コンピューター上での仮想実験の結果、心血管系の治療剤がアルツハイマー型認知症の治療に最も有望と判明した。特に、14種類の心血管系治療剤の中でも、バイアグラのシルデナフィル成分の効果が最も高いだろうという予測が出た。

【図】バイアグラのアルツハイマー予防効果、どうやって見つけ出したか

 膨大な患者診療記録も、こうしたコンピューター予測を裏付けた。米国人700万人以上の、6年にわたる治療・診療記録を分析した結果、シルデナフィルの服用者は他の人々よりアルツハイマー型認知症の発病リスクが69%も低かった-と研究陣は明かした。他の高血圧、糖尿病治療剤の服用グループよりも55-63%低かった。アルツハイマー型認知症患者の脳細胞実験でも、シルデナフィルは細胞の成長を促進し、タウタンパク質の凝集を減少させたと研究陣は説明した。ただし論文には、具体的な平均服用期間や回数などについては出ていない。

■新薬再創出で開発期間・費用を削減

 研究陣は「今後、男女双方が参加する臨床試験を通して、シルデナフィルのアルツハイマー予防効果を確認したい」と表明した。シルデナフィルとアルツハイマー型認知症予防の間の明確な因果関係を突き止めたい、というわけだ。しかも今回の研究では、シルデナフィルの成分を服用した人のうち女性は2%にとどまり、人口全体を反映できなかったという限界もある。研究陣は「パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルー・ゲーリック病)といった他の退行性脳疾患にも効果があるかどうか調べてみる計画」とコメントした。

 研究陣は、既に治療剤として許可を受けて安全性が確認されたバイアグラを、他の疾病の治療剤として追加開発する「新薬再創出」を通して、今後の臨床にかかる時間と費用を抑える方針だ。エボラ出血熱の治療剤「レムデシビル」がコロナ治療剤として許可を受けた一件が、新薬再創出の代表例だ。米国国立老化研究所(NIA)のジャン・ユアン博士は、「ネイチャー」誌上で「今回の研究はビッグデータに基づいた精密医学が既存の治療剤をアルツハイマー型認知症のような複合疾患とつなげることができることを立証したもの」と評価した。

イ・ヨンワン科学専門記者

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