「韓国史は井の外から見るべき…平和な時期の方がはるかに長かった」

米ブリガム・ヤング大学名誉教授のマーク・ピーターソンさん
ユーチューブでフォロワー12万人の有名チャンネルを運営…韓国文化・族譜の読み方などを紹介

 「韓国名はペ・ドソン。(ドソンは)道の字に善と書きます。ピーターソンなので、ピ氏にしようかと思いましたが、ピー(pee。小便)のように聞こえかねないじゃないですか。だから羅州ペ氏にしたんです。1946年に生まれた(ほとんど)解放っ子です。ハーバードで東洋学と韓国学を学びました」

 75歳の米国人老教授は、流ちょうな韓国語で自己紹介した。インタビューを求めると「そうですか! ユーチューブのフォロワーをちょっと増やしましょう!」と愉快に応じた。ハーバード大学の博士出身で、米国ブリガム・ヤング大学で35年間韓国学を教えたマーク・ピーターソン名誉教授は、退職後の2019年7月からユーチューブで「井の外のかわず」というチャンネルを運営し、韓国の歴史、とりわけ儒教文化について伝えている。そんなピーターソンさんに最近、書面でインタビューした。彼は「教授だったころよりユーチューバーとして仕事をする方がはるかに忙しい」と語った。

 「“I want to move the needle.”という表現がありますよね。目に見える変化をもたらしたいという言葉です。この言葉のように、私は韓国社会の歴史観を動かしたかった。韓国は依然として、最近およそ100年ほどの狭い歴史にこだわり、“被害者の歴史観”を持っているようです。長い目でもって、平和で安定していた歴史全体に光を当てる必要があります」。たくさんの戦争があった欧州と違い、韓国の歴史はモンゴル侵入、壬辰(じんしん)倭乱(文禄・慶長の役)、丙子胡乱(1627年の後金の侵略および1636-37年の清の侵略)と20世紀以降の植民地・戦争を除けば極めて平和裏で、安定的な時期が長く続いた。チャンネル名の「井の外のかわず」は、外国人として韓国の歴史に光を当てるという意味と、みんな井戸の外へ出てきて歴史を広く眺めればいいのに、という意味を共に盛り込んだものだ。

 コンテンツの中には「なぜこれほど大勢のキムさんがいるのだろうか」「族譜の読み方」「婚家と嫁取り」といった儒教文化に関連するものが多い。韓国人でもきちんと説明するのは難しい内容だ。「儒教文化で男女はもともと平等でしたが、18世紀から『出嫁外人』『男尊女卑』といった概念が入ってきました。後の儒教は捨てて、以前の『男女平等儒教』を継承すべきです」。ピーターソンさんは、韓国語と英語で儒教の話を愉快に繰り広げる。金氏が多い理由は「朝鮮王朝時代、3年置きにあった人口調査のたびに、平民や奴婢(ぬひ)が自分の名前を登録する際『貴族の姓氏』である金氏を持ってきて書いたから」とする。

 1965年11月に宣教師として初めて韓国の地を踏んだ。韓国で2年半を過ごす中、初めて韓国語を学んだという。韓国の家族関係、教育熱に強い関心を抱き、朝鮮王朝実録を中心に家族制度について学ぶようになった。こうした内容を盛り込んだ動画「ハーバードの博士が韓国に来た理由」は、再生数が39万回を超える。

 韓国に対するピーターソンさんの愛は格別だ。コロナ以前までは、毎年韓国で各種のセミナーや講演に加わった。2017年からは、30代の脱北者夫婦と親子のように一緒に暮らしている。夫婦が生んだ赤ん坊の「おじいちゃん」を自任している。「夫婦どちらも最近米国で大学を卒業し、就職してきちんと過ごしています。孫もちゃんと大きくなってますよ!」。韓国語がうまいと言うと「韓国の言葉はほんとうに難しい。死にそうです」と答えた。

 「韓国にまた行きたい。そのときまで、ユーチューブの動画をたくさん作ります」。来年春からは、コロナのせいで先延ばしになっていた講演を再開するのが目標だ。また、ドキュメンタリー映画を製作中でもある。「韓国戦争のとき、私の故郷ユタ州から加平へ派兵された部隊の物語」だという。

 12万人のフォロワーからよく言われるのは「お元気で」「長生きしてください」だ。ピーターソンさんは「私の健康を気遣ってくれて、とてもとても感謝している」と語った。「自分では高齢だとは思っていなかったけれど、いつの間にか歳を取っていました。それでも、やれるところまでは韓国コンテンツをアップしますよ!」

チェ・ヨンジン記者

<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) Chosunonline.com>
あわせて読みたい