快走する韓国製バッテリー、中国の原料がなければ作れない

中国が輸出を止めたら「第2のヨウ素水事態」

快走する韓国製バッテリー、中国の原料がなければ作れない

 韓国のバッテリー産業を代表する大手3社による電気自動車(EV)向けバッテリーの受注残高が約500兆ウォン(約48兆円)に達することが分かった。しかし、バッテリーの重要な材料は大半を中国に依存しており、サプライチェーンの安全性が低いと懸念されている。最近のヨウ素水不足のように、中国が原材料生産を縮小するか、輸出を中断した場合、バッテリーの生産コストが急騰するか、生産自体が困難になるなどして、産業全体が揺らぎかねない。実際に中国が掌握したバッテリーのサプライチェーンには最近亀裂が生じ、来年にはバッテリー価格が上昇するのではないかとの見通しが示されている。専門家は「中国のローテク産業が韓国のハイテク産業を揺るがしかねない」と警告した。

■中国がバッテリーのサプライチェーン掌握

 中国はEV向けリチウムイオン電池の重要素材である正極材料、負極材料、分離膜、電解質の市場を掌握している。韓国のバッテリーメーカーは中国から原材料だけでなく、それを加工した中間材も輸入して、最終製品のバッテリーを生産している。

 バッテリー業界によると、バッテリー価格に占める材料費の割合は50%で、うち正極材料が44%を占める。ところが、正極材料市場は中国が58%のシェアを握っており、韓国企業のシェアは9%にすぎない。韓国は正極材料の原材料となる前駆体(ニッケル、コバルト、マンガンを混合した粉末)もほぼ全量を中国からの輸入に頼っている。正極材料で最も高価なコバルトはコンゴ民主共和国が世界の採掘量の78%を占めるが、中国がコンゴの鉱山を掌握し、採掘したコバルトの72%を中国で加工する。また、オーストラリア、チリなどで採掘されるリチウムも61%は中国で加工する。バッテリー業界関係者は「中国は電気料金、水道料金など公共料金が安く、重要原料の加工を容易に掌握できた。難しい技術ではないが、中国がなければバッテリーを作れない構造になっている」と話した。

 負極材料市場は中国の世界シェアが66%だ。負極材料には黒鉛が使われるが、中国は安価で質が高い人造黒鉛を大量生産し、韓国のバッテリーメーカーに供給している。韓国のポスコケミカルが天然黒鉛を生産しているが、価格競争で押されている。

 正極と負極を仕切る分離膜は日本の旭化成が市場を主導してきたが、最近中国の上海恩捷が安値攻勢でシェア首位に躍り出た。中国は世界の電解質市場の72%も掌握している。SNEリサーチのキム・グァンジュ代表は「電解液に使われる中国製リチウム塩の価格は年初には1キログラム当たり15ドルだったが、最近は80ドルまで高騰した。中国製への依存度を抑えなければ、価格変動リスクに対応することが難しい」と指摘した。

■低下していたバッテリー価格、「チャイナボトルネック」で急反発

 中国がバッテリー価格の決定に絶対的な影響力を及ぼす状況で、来年にはバッテリー価格が上昇するとの見通しが示されている。ブルームバーグNEFは11月30日、来年の世界市場でのバッテリー価格が今年に比べ2.3%上昇すると予想した。バッテリー価格の上昇はブルームバーグがバッテリー価格の調査を開始した2012年以降で初めてだ。10年に1キロワット時当たり1200ドルに達していたバッテリー価格は昨年140ドルまで下落した。しかし、今年は下落幅が前年比6%にとどまり、来年には上昇に転じるとみられている。中国2位のバッテリーメーカー、比亜迪(BYD)は最近、客先に対し、原材料価格の急騰に耐えられないとして、リン酸鉄リチウム電池 の価格を20%引き上げると通告した。

 自動車業界はバッテリー価格が1キロワット時当たり100ドルになれば、内燃機関車とEVの価格が同じ水準になるとみているが、ブルームバーグはその時期が2年遅れ、24年以降になると予想した。フォード、ルノーなどの自動車メーカーは最近、30年までにバッテリー価格を80ドルまで引き下げると表明したが、その計画にも支障が生じかねない。西江大のパク・チョルワン教授は「今のような構造では韓国バッテリー産業は持続不可能だ。今からでも中国以外の場所に原料調達先を多角化し、前駆体のような素材産業を育成すべきだ」と指摘した。

柳井(リュ・ジョン)記者

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