【コラム】BTSも米国で経験した人種差別

 世界的な人気を誇る韓国の男性アイドルグループBTS(防弾少年団)も「米国で人種差別を受けた」と語ったことがある。リーダーのRM(アールエム)は先月28日、米ロサンゼルスのSoFi(ソーファイ)スタジアムで行われたグローバル記者懇談会で「海外で活動していて多くの壁を感じました。こうした壁は明確なものもあり、目に見えないものもあります」と語った。これは、ある記者がアジア人に対するヘイト(嫌悪)に関する質問をしたときに答えたものだ。このような質問が出たのには理由がある。BTSは今年3月、人種差別を受けた経験を告白していた。このとき、メンバーたちは「アジア人であるという理由で差別されたことがあります。道を歩いていると、何の理由もなくののしられ、容姿を中傷されました。しかも、『アジア人なのになぜ英語を話すのか』とも言われました」と語った。「Stop Asian Hate(アジア人ヘイト・ストップ)」運動が起こった時のことだった。

 BTSが経験したと言った差別は、ただ単に外国人だからという理由ではない。歌手エリック・ナムは米ジョージア州で生まれた韓国系米国人だが、差別された経験を忘れない。彼は米国の有名私立大学ボストン・カレッジに通っていた時、オーディション番組に出場するために韓国に来て歌手デビューを果たし、今は米国でも活動している。先日、米国のラジオ番組で差別された経験を告白した。「あなたは米国人なのに、韓国でキャリアを築いたのですね?」という質問に、エリック・ナムは「アジア系米国人にはチャンスをくれなかったからです。みんな私に『なぜ韓国に行くことを選んだのですか?』と聞きますが、私は選んだのではありません。米国ではチャンスがなかったのです」と答えた。

 スターたちでもこうなのだから、一般のアジア人たちが経験する差別は言うまでもないだろう。映画『パラサイト 半地下の家族』が米アカデミー賞を受賞し、動画配信サービス大手「ネットフリックス」で公開された韓国ドラマ『イカゲーム』が世界1位になっても、米国国内のアジア人に対する認識はそう簡単には変わらない。BTSは先月21日、米音楽授賞式「アメリカン・ミュージック・アワード(AMA)」で最高賞に当たる「アーティスト・オブ・ザ・イヤー」を受賞するほど、同国内で最も人気のある歌手になったが、それでも人種差別にさいなまれている。以前コンサートが行われたときは、BTSのメンバーと毛沢東を合成した写真を持って現れたユーチューバーもいた。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記と結び付けて非難したり、もっとひどいことに新型コロナウイルスに例えたりした例もある。

 米国は移民国家であると同時に「チャンスの国」だが、人種差別が暗い影を落としている社会であることも否定できない。昨年5月に黒人男性ジョージ・フロイド氏が死去した事件で「Black Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命は大切だ)」運動が起き、黒人の人権に対する覚醒を促した。一方、「アジア人ヘイト・ストップ」運動はそれほど広がらなかった。アジア人の人権に対する認識の水準が低いためだと言われている。

 BTSや『イカゲーム』に熱狂する米国人がいる一方で、アジア人を無条件に排斥し、嫌悪する人々も多数存在する。こうした人々は民主主義と人権の国・米国に暗い影を落としている。

イ・ヘウン記者

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