【寄稿】コロナ禍の日本で国益を優先する国家主義が浮き彫りに(下)

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 東京財団政策研究所の渋谷健司研究主幹は、日本では最近症例数が少ないため死者数も少ない、と説明する。日本人の生活習慣のおかげで、新型コロナにかかる可能性が他国よりも少ないということだ。日本人は普段から花粉症や風邪防止の目的でマスクをする人が多い。手指消毒薬の使用も生活習慣化している。時間がたつにつれて、中央政府と自治体間の協力体制がうまく機能するようになったことも新型コロナ予防に効力を発揮している。渋谷氏は感染者急減の背景について、「日本で人々はマスクをしたり社会的距離を確保したりして非常にうまく行動していた」と評価した。

【グラフ】日本の新型コロナ一日新規感染者数の推移

■「新型コロナ=自然災害」と受け止めて忍耐する日本人

 新型コロナ流行初期の日本人の反応は鈍かったが、その後、次第に安定した原因は何だろうか。歴史小説『坂の上の雲』を書いた日本の国民的作家・司馬遼太郎はかつて、小さな島国が短期間に国力を伸ばした原動力について「国家危機時の日本人のすばやい意識転換能力」と説明した。日本人は自然順応的で、新型コロナに無理に抵抗しなかった。韓国のようにウイルスを強力に制圧する考えはそもそもなかった、ということだろう。

 五輪開催に恋々として緊急事態宣言を出すのが遅れたり、伝統的な地方分権体制が防疫活動の支障になったりした、と説明する日本人も多い。

 第二次世界大戦直後に「日本人」の実体を深く掘り下げた米国人社会学者ルース・ベネディクトの著書『菊と刀』にもその糸口がある。ベネディクトは「菊」と「刀」を通じて日本人の2つの極端な性格を取り上げた。「軍事を優先しつつ、同時に美も追究する。思い上がっていると同時に礼儀正しい。頑迷でもあり、柔軟でもある。従順であると同時に、ぞんざいな扱いを受けると憤る。節操があると同時に二心もある。勇敢でもあり、小心でもある。保守的であると同時に、新しいやり方を歓迎する」と分析する。

 この2年間を振り返ってみると、新型コロナ流行初期は日本人の「二重性」のうち、弱点の方がより多く作用したようだ。まったく予測できなかった新型コロナ危機の状況下でも、周囲の人々に迷惑をかけないようにする集団優先傾向のある配慮が感染を拡大させた。これまでの制度や慣習をなかなか変えない伝統重視の気質や、外部の人々に「本音」を見せまいという「閉鎖性」が、正体不明の「ウイルス」攻撃に対してすきを見せた。

■新型コロナ流行 日本の「第4次産業革命」のきっかけになるか

 日本人は変化を非常に嫌う。絶体絶命の危機が迫るまでは、それまでの慣習や制度を維持する傾向が強い。古くからアジア大陸と切り離された島国という地理的特性が国民性に影響しているのだろう。彼らは外部環境の変化に非常にゆっくり反応するが、国家的な危機と判断されれば革命的な転換をしてきたという特性がある。徳川幕府から明治維新(1868年)が起こり、第二次世界大戦での敗戦後、軍国主義から自由民主主義・市場経済体制へと姿を変えてきた。

 「新型コロナ流行」は日本社会に大激変の風を巻き起こしているようだ。伝統意識・宗教などで変化の動きが感知されている。固有の宗教である神道と仏教の儀式も少しずつ変わってきている。最近、神社や寺の参拝をオンラインで行う例が出ている。日本人の精神的な支えである皇室も変わりつつある。皇室では今年に続き、来年も新年祝賀行事を新型コロナ感染防止のため「映像」で代替することにした。

 日本は政治と官僚エリートの「官」が主導し、「国民」がそれについていく構造になっている。国家指導者である首相はこの2年間で目まぐるしく変わった。安倍晋三首相の8年間にわたる長期政権は幕を閉じ、後任の菅義偉政権は1年間という短命に終わった。そして、グローバルな感覚を持つ実力派・岸田文雄首相が今年11月上旬に登場した。外国人全面入国禁止のような閉鎖政策は、開放的な世界市民社会に合致しない。岸田政権の下、第4次産業革命が本格化するかが注目ポイントだ。新たな資本主義建設を掲げて就任した岸田首相が日本を再び成長軌道に載せ、デジタルと脱炭素社会という構造転換へと導いていくことができるのか。日本の変身が注目される。

崔仁漢(チェ・インハン)時事日本研究所所長

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