【コラム】小国リトアニアに学ぶ中国の扱い方(下)

台湾代表部設置後、中国による経済報復攻勢にEU内の反中世論戦で対抗
米国の価値観外交に加わり安全保障と経済の実利を追求

■環球時報「はえを捕まえるように叱りつけるべきだ」

 中国では両国の外交関係を大使級から代理大使級に格下げし、輸出入電算網の輸入対象国リストからリトアニアを排除するなど大規模な報復に乗り出しています。リトアニアに向かう貨物列車の運行も中断しました。

 しかしリトアニアは全く動じません。「中国の制裁は栄光であり、われわれが正しいことを確実に示している」という雰囲気だそうです。ある西側メディアは「経済的な損益の計算よりも民主主義と人権、国際社会のルールなどを重視するリトアニア式の価値観外交だ」と分析しています。

 昨年12月に中国外交部(省に相当)は中国国内のリトアニア大使館員とその家族19人に対して身分証の更新を要求する形で嫌がらせをしましたが、これに対してリトアニアは全員を本国に帰還させてしまいました。

 リトアニアは欧州連合(EU)を中心に中国に対抗しています。中国の制裁を「WTO(世界貿易機関)のルールに反する不当な脅迫」と見なし、「EU加盟27カ国が結束して対抗すべきだ」と世論戦を仕掛けています。EUは第三国から不当な経済制裁を受けた加盟国を保護する手段を作るための協議を始めることにしました。

 中国国営メディアは人口わずか280万人のリトアニアを「象に挑戦するねずみ」「はえ」などに比喩しながら激しく攻撃しています。言い換えればそれだけ懲らしめの手段がないということです。リトアニアは中国向け輸出の割合がわずか1%で、経済制裁の効果はさほど大きくありません。

■反中外交の背後に隠された小国の生存戦略

 リトアニアが反中の先頭に立つことを自認する背景には、この国の歴史的経験があります。近代以降はずっとロシア帝国の支配を受け、第2次大戦直前にはソ連に併合されましたが、旧ソ連の崩壊によって独立しました。長い間続いた血の支配により大国の横暴や共産党による強圧的な統治に対する反感は非常に強いそうです。

 もちろんこのような情緒的な理由だけで中国に対抗しているわけではありません。リトアニアは過去に支配を受けたロシア、独裁国家のベラルーシなどと国境を接しており、常に安全保障上の脅威を受けています。そのため2004年に北大西洋条約機構(NATO)に加盟し、NATO軍の駐留も認めています。

 反中外交を進める最も大きな理由も、ロシアをけん制するには米国の力が必要になるからです。中国と熾烈(しれつ)な体制競争を繰り広げる米国を後押しすることで、米国がリトアニアに継続して関心を持ち続けるよう仕向ける戦略ということです。リトアニアは数年前に大統領自ら米国に米軍の常時駐留とTHAAD(高高度防衛ミサイル)配備を要求しています。

 経済的な理由もあります。リトアニアは1人当たりの国内総生産(GDP)が2万ドル(約230万円)前後に達する北欧でも代表的なIT(情報技術)強国です。世界的な半導体企業を持つ台湾と協力することが経済的にも実利が大きいと判断したようです。

崔有植(チェ・ユシク)東北アジア研究所長

<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) Chosunonline.com>
関連ニュース
あわせて読みたい