【記者手帳】K防疫は自画自賛か? 救急病棟さえ見れば分かる現実

 今年2月25日に乳幼児のコロナ患者を取材するためソウル峨山病院小児専門救急センター(ソウル市松坡区風納洞)を取材した。感染のリスクを避けるため家族以外はセンターに入れなかった。やむなく病院の外で待機しながらセンターを出入りする患者の家族や看護師らへの取材を続けた。

 今回数時間にわたり病院の外で待機する間に多くの救急患者が救急車で病院に担ぎ込まれた。4-5台の救急車のうち1台からは防護服を着用した医療スタッフが出てきた。患者はほとんどが50歳代以上で、いずれも酸素マスクを装着していた。コロナの重症患者だ。実際にコロナの重症患者を目の当たりにしたのはこの時が初めてだった。それまでは資料で「病院の重症患者数」「死亡者数」などとして集計された数字しか見たことがなかったからだ。

 それから3日後の28日、中央防疫対策本部は米国、英国、フランスなど主要9カ国における人口10万人当たりのコロナによる累計死亡者数のグラフを公開した。韓国は米国、デンマーク、フランス、ドイツなどに続き累計の死亡率は8番目に低かった。オミクロン株の広がりで死亡者の数が急増し「K防疫」への批判が強まると、韓国政府は「先進国に比べるとこれまで死亡者の数が少ないので問題ない」としてこの資料を公開した。政府の資料を見て感じたことは「乖離(かいり)感」だった。「多くの人が犠牲になっているが、他の国より少ないので問題ない」という趣旨の説明が果たして正しいアプローチだろうか。

 先日青瓦台(韓国大統領府)を訪問した際、訪問客を迎える舍廊チェと呼ばれる建物の2階に「コロナ19克服をけん引したK防疫」というテーマでさまざまな資料が展示されていた。「経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で累計の感染者数と死亡者数は最も低いレベルを記録しました」という死亡者の数を自慢する文言も堂々と掲示されてた。青瓦台舍廊チェは誰もが自由に出入りできる開放された空間だ。

 韓国政府は海外の死亡者数と比較し「韓国国内での感染症の状況はまだ良好な水準」と自己陶酔する手法を繰り返してきた。昨年12月23日に文化体育観光部(省に相当)が制作し配布した広報冊子「大韓民国、危機を乗り越え先進国に」も同様だった。「人口10万人当たりの累計死亡者数はOECD加盟国で2番目に少ない」として「世界が認めたコロナ19防疫の成果」という題目が付けられていた。12月23日には韓国でデルタ株の感染がピークとなり、1日109人の死亡者が発生した。

 韓国政府が全力でK防疫を自慢する際に医療現場で発生する死亡者は数字となる。歴史上かつてない感染症により全世界で毎日数多くの人たちが家族や友人を失っているが、韓国政府は「韓国の死亡者数は最も低い」として2年にわたり自画自賛を続けている。医療現場でコロナの救急患者を実際に目にした立場からすると、こんなやり方には拒否感を覚えるどころかぞっとする。防疫の専門家たちが「現実否定」「精神勝利」などの言葉で政府を厳しく批判するのも当然だろう。

 今後死亡者の数はさらに増える見通しだ。韓国よりも早くオミクロン株に見舞われた国々の状況を見ると、感染者数がピークに達した後も2-4週間にわたり死亡者の数は増え続けている。専門家は3月末から4月初めまで死亡者の数は1日300-400人、1カ月で1万5000人前後の死亡者が発生する可能性があると試算している。

 およそ4カ月にわたりコロナ関連の取材を続けながら、個人的に下した結論は「防疫に成功などなく、ただ対応と失敗だけがある」ということだ。もし1人の死亡者も出なければ成功を口にしてもよいが、コロナウイルスの感染力、致命率を考えるとこれは現実的に不可能だ。

 オミクロン株もピークが目前だ。入院中の重症患者は1000人を上回り、1日死亡者数は200人近くに達している。周辺国の状況と比較して「韓国は成功した」と安心するのではなく、失敗を防ぐ対策に向け頭を使うべきときだ。

チェ・ジョンソク記者

<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) Chosunonline.com>
関連ニュース
あわせて読みたい