【寄稿】「韓国は北朝鮮より優位」という包容政策の前提が崩壊した(上)

ここ3年で61発のミサイル挑発
これを「対話再開に向けた北朝鮮のメッセージ」と考えるのはそれこそまさに「特等の愚か者」
圧倒的な北核抑止力があって初めて交渉も可能

 「火星17型」の火柱を見て怒りを抑えられなかった。ここ3年で61発のミサイル挑発を目の当たりにしながら、これを「交渉を再開しようとする対話メッセージ」と考える人間がいたとすれば、それは金与正(キム・ヨジョン)の指摘通り「特等の愚か者」であることは間違いない。過去30年間、韓国の歴代政府が「慣性の法則」のように行ってきた対北朝鮮政策への弔電だ。冷戦後、韓国の歴代政府は北朝鮮に対して「包容政策」を続けてきたにもかかわらず、北朝鮮の核武装は現実となり、韓国が望んでいた北朝鮮の前向きな変化も実現しなかった。

包容政策が行われた30年間、開放、非核化、市場化、自由、人権などあらゆる指標を動員しても北朝鮮で前向きな変化があることを示す客観的な根拠を見いだすことはできなかった。故・金大中(キム・デジュン)元大統領が「トウ小平のような粘り強い改革者」と評価した故・金正日(キム・ジョンイル)総書記、そして柳時敏(ユ・シミン)氏が「啓蒙(けいもう)君主」と評した金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が率いてきた北朝鮮は核兵器に天文学的な資金をつぎ込んだが、その慢性的な経済問題や食糧難は今も放置している。文在寅(ムン・ジェイン)政権による韓半島平和プロセスのリアリティーショーは派手なものだったが、その結果は連絡事務所が爆破され、南北関係は交流さえない最悪の状態となり、北朝鮮軍は韓半島全域を核を使って正確に攻撃できる新たな戦力に生まれ変わった。手元に残ったのは韓国統一部(省に相当)南北合意書総覧の707ページに達する絶対に守られない膨大な南北合意だけだ。過去の対北朝鮮政策に対する徹底した再検討に加え、政策の転換が必要だろう。これまでと同じ政策を繰り返しながら異なる結果を望むとすれば、それはあまりにも愚かだ。

 失敗を克服するにはまず現実に対する冷徹な自己評価を最優先にやらねばならない。何よりも包容政策を支えてきた数々の前提が崩壊した。包容政策は脱冷戦の産物だ。共産主義圏が連日ドミノのように倒れた冷戦崩壊の状況で、韓国は体制競争で勝利し、包容政策を通じて北朝鮮を自分たちの望む方向に変化させることが可能と考えた。さらに中国とロシアの協力を得れば北朝鮮から非核化と改革・開放を引き出せると考えた。中国の戦勝記念日に西側諸国の中で唯一大統領が天安門に立つことにも応じた。しかし望んでいた中国からの協力は得られなかった。

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