【萬物相】帰ってきた円安時代

【萬物相】帰ってきた円安時代

 日本の右派メディアが度々報道を繰り返してきたのが「対馬危機論」だ。韓国の資本と観光客が押し寄せ、対馬が売り渡される危機なのだという。誇張なのは明らかだが、円安時代に対馬の通りを歩けば、確かに韓国の観光客があまりに多く、ここが日本なのか韓国なのか迷うこともある。最近のように円安だった2018年に対馬を訪れた韓国人の数は対馬の人口の14倍に達した。

 対日貿易収支のように赤字が慢性化しているのは対日旅行収支だ。05年から20年までの16年間のうち11年間が赤字だった。18年には赤字幅が37億ドルにまで拡大した。韓国人観光客が北海道の最北端まで行って円を使った。そんな局面で待ってましたとばかりに正反対の行動を取る人たちがいる。円を使うのではなく、円をこつこつ買って貯蓄する人たちだ。

 09年3月、東京・新宿のコリアタウンの両替所に長蛇の列ができた。世界的な経済危機でウォンが対円で大幅に下落した。07年の100円=800ウォン台から一気に1600ウォン台を付けた。これまで通帳に貯め込んできた円をウォンに換えて本国に送金しようという日本駐在の韓国人が殺到したのだ。為替差益は相当なものだった。当時を記憶する人は度々円で財テクをする「円テク」をする。円安局面で円を買い、円高局面で売って差益を手にする。待っていれば安定的な差益が得られた。為替安定にも貢献した。

 通貨を支える日本経済のファンダメンタルズが以前ほどではないというが、円に対する国際的信頼は相当なものだ。円安は永遠には続かないという信念だ。実際に日本円は現存する国際通貨のうち、長期的に相対的なドル安に追い込んだ代表的な通貨だ。1970年に1ドル=360円だった円は現在120円だ。長期的に価値がこれほど上昇した通貨はない。同じ期間に1ドル=310ウォンから1200ウォンになった韓国ウォンと比較すれば、為替投資家がなぜ円を好むのか理解できる。

 日本はこれまで物価もあまり上がらなかった。商品とサービスの質が低下したという話もない。日本メディアは「日本安」だと嘆くが、「バーゲンセール日本」「コストパフォーマンス日本」というのが客観的評価だ。コロナで閉ざされた門戸が開かれれば、日本にショッピングに出かける韓国の繰り延べ需要は相当な規模だという。ある日本の外交官は「最近韓国の経済人に会うと、韓日関係よりも安い日本のゴルフ場の話をする」と話した。久しぶりに到来した円安時代は「ぼったくり韓国」を振り返る機会になるかもしれない。

鮮于鉦(ソンウ・ジョン)論説委員

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