【コラム】「円安・物価高」、他人事ではない

 4月29日付朝日新聞に「日銀の債務超過危惧 1ドル500円、国債投げ売りも」という記事が掲載された。日本で「伝説のディーラー」と呼ばれた藤巻健史・元モルガン銀行東京支店長のインタビューだった。藤巻氏の見方はぞっとする内容だった。「1ドル=400~500円になってもおかしくないと思う」。現在、対ドルで130円まで下落した円の価値が3分の1以下になるというのだ。

 約20年前の韓国の通貨危機当時、最悪の為替レートが「1ドル=1995ウォン」だったという点を考えれば、行き過ぎた悲観論だ。しかし、同日には読売新聞と日本経済新聞も1面トップで「円、1ドル=130円」の円安水準を懸念した。 年初には100円前後だったので異例の円安であることは事実だ。

 このような悲観論は行き過ぎだが一理ある。米国が大幅な利上げを予告する中、日銀は「無制限量的緩和」という正反対の道を選択したためだ。日銀は毎日、日本国債(10年物)を利回り0.25%で無制限に買い入れている。国債利回りが0.25%を超えない水準まで買い付けているのだ。日銀が国債購入時に支払った円は市場に流れる。米国がドルを回収しているのに、日本は円の供給量を増やすのだから、円安が進むのは当然だ。

 これを知らないはずがない日銀がなぜ国債利回り0.25%の防衛に必死になるのか。朝日新聞は日銀が9年間続けてきた「金融緩和」のわなにかかったと分析する。景気活性化に取り組む政権のため、日銀は政府が発行した約520兆円という巨額の国債を低金利で抱えた。この過程でひずみが生じた。日本政府が国債を発行すれば、それを市中銀行が購入し、さらに日銀が市中銀行から低利回りで買い入れた。ところが、市中銀行は国債を売却した資金を再び日銀の当座預金に預けた。現在は国債利回りと当座預金の金利が同水準だから構わないが、金利が上昇すれば日銀は困る。金利が1ポイント上昇しても、日銀が市中銀行に支払う利子は年約5兆円増える。単純計算だ。世界最高の富豪とされる日銀が債務超過に陥る最悪の瞬間が到来する可能性も否定できない。「悪い円安」はそのまま日本人の苦しみにつながる。コンビニの缶ビール、食パンから銭湯料金、住宅賃料に至るまで生活物価が急騰している。

 薄氷の上に立っている円を横で見守るウォンも状況は思わしくない。ウォンの価値も下落が続き、1ドル=1270ウォン前後だ。 経済の不確実性がピークに達する状況で、10日に発足する尹錫悦(ユン・ソクヨル)新政権はどんな苦悩を抱えているのだろうか。先月訪日した韓日政策協議代表団は、日本の要人と会い、一貫して韓日関係の改善を強調した。議題の中に、為替レート不安に伴う韓日の対応協力案も一行含まれていたことを願っている。

東京=成好哲(ソン・ホチョル)記者

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