【萬物相】北朝鮮のコロナ公表

【萬物相】北朝鮮のコロナ公表

 昨年2月に北朝鮮は中国駐在大使にかつて内閣副首相を務めた李竜男(リヨンナム)氏を任命した。ところが李大使が北京に到着し信任状を提出した後も、前任の池在竜(チ・ジェリョン)大使は1年以上にわたり帰国できない状態が続いてる。北朝鮮におけるコロナ封鎖の影響だ。北朝鮮は国際オリンピック委員会(IOC)に加盟する206カ国・地域のうち、コロナを理由に東京オリンピックに参加しなかった唯一の国だ。北朝鮮によるコロナ封鎖は世界で最も厳しいものだった。

 このように極端な対策を取り始めてから2年3カ月後、北朝鮮もコロナ感染者が出た事実をついに認めた。金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が出席した政治局会議において「わが国の非常防疫戦線に穴があく国家最重大の非常事件が起きた」と報告されたのだ。金正恩氏も初めてマスクを着用してこの会議に出席した。北朝鮮はこれまで「コロナ感染者は一人もいない」と主張してきた。

 北朝鮮は「ゼロコロナ」政策にこだわる中国とは異なる。中国はその効果が疑われる独自開発のワクチンを国民に接種してきた。2回目の接種まで終えた割合は87%だ。これまで感染者も決して少なくはなかった。これに対して北朝鮮は国際機関のCOVAXが提供を申し出たワクチンも受け取らなかった。全世界でコロナワクチンの接種を今も行っていない国は北朝鮮とアフリカのエリトリアの2カ国だけだ。エリトリアは「アフリカの北朝鮮」と呼ばれる独裁国家だ。

 北朝鮮で患者の検体を分析したところ、オミクロン変異株のBA2、いわゆるステルス・オミクロン株だったという。このウイルスは重症化する割合は低いといわれるが、それはワクチン接種や集団感染がある程度進んだ場合の話だ。北朝鮮のように免疫のレベルがゼロに近ければ、ステルス・オミクロン株であっても致命的なものになりかねない。しかも北朝鮮のように医療施設が最悪で、住民の栄養状態も良くない環境で流行すれば、一層破滅的な事態を招くかもしれない。2019年に中国でアフリカ豚熱が発生した際、北朝鮮の養豚産業はほぼ全滅したと伝えられている。それ以前から北朝鮮は2015年のMERS(中東呼吸器症候群)、03年のSARS(重症急性呼吸器症候群)、さらに14年にアフリカでエボラ患者が発生したときも国境閉鎖という対応を取ってきた。

 北朝鮮がコロナ患者の発生を公表した理由は国際社会にワクチンと薬を求めるシグナルの可能性も考えられる。しかし北朝鮮が防疫支援を要請してもワクチンの提供は簡単ではない。ファイザーやモデルナなどのmRNAワクチンはその運搬にマイナス20度のコールドチェーンが必要だが、北朝鮮では度々停電が発生するためこれらのワクチンは使えないだろうし、そんな冷凍庫もほぼないはずだ。ただし飲み薬の提供は現実的に可能だろう。暴政に加えてコロナまで広がり、さまざまな面で苦しむ北朝鮮住民のことを思うと心が重い。

キム・ミンチョル論説委員

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