天然資源少ない韓国、炭素中立に欠かせない鉱物の6割を5カ国に依存

【世界は鉱物資源を武器化…このままじゃお手上げ】
6大鉱物の輸入額、中国産が37%で1位、日本・米国・チリ・ニューカレドニアの順
メキシコ・チリ、リチウム開発を国有化…インドネシア、ニッケルに次いで銅の輸出阻止へ
「弊害が重なり海外資源開発現場からは人材蒸発、独立機関を立ち上げて全権を委ねるべき」

天然資源少ない韓国、炭素中立に欠かせない鉱物の6割を5カ国に依存

 メキシコ議会は4月19日、リチウムの探査、開発、採掘の権限を国営企業に委ねるという国有化法案を可決させた。チリも今年3月、リチウム鉱山の国有化が盛り込まれた憲法改正草案をまとめた。ニッケルの生産で世界1位のインドネシアは、2020年からニッケル原鉱の輸出を禁止し、アルミニウムの原料であるボーキサイトと銅も、今年から来年にかけて相次いで輸出禁止とする方針だ。コバルトの最大生産国であるコンゴ民主共和国も、不純物を除去したコバルト精鉱の輸出を禁ずる方向で検討を進めている。

 炭素中立を実現するために必要な鉱物として挙げられるリチウム、ニッケル、コバルト、希土類(レアアース)などを巡り資源の国有化、資源の武器化を進める風潮が高まりを見せている。産油国が列強から石油の利権を取り戻し始めた20世紀半ばのような状況が、21世紀には鉱物を中心に再燃しているのだ。韓国の新政権は、重要な鉱物までを資源安保の範囲とし、民間主導の鉱物資源開発に乗り出す意向を明らかにしているが、企業だけに任せるには限界がある、との声が高まりを見せている。資源貧国を超えて資源無国とされる状況で、成功の可能性が極めて低い鉱物資源開発を、民間企業にだけ頼っていられるほどの余裕はないというのだ。

■6大鉱物、中国などに過度な依存

 韓国は炭素中立に必要な6大鉱物の60%ほどを中国など5カ国に依存している。6大鉱物(リチウム、ニッケル、コバルト、黒鉛〈グラファイト〉、レアアース、白金族金属)は、電気自動車のバッテリーや新再生エネルギーの拡大に欠かせない鉱物だが、グラファイトを除けば国内自給率は0%で、全量輸入に依存している状態だ。

 5月1日、韓国地質資源研究院によると、2020年の韓国の6大鉱物の原材料や素材・部品の輸入額の60.9%は、中国など5カ国に集中していることが分かった。中国の割合が37%と最も高く、続いて日本(9.9%)、米国(5.3%)、チリ(5.1%)、ニューカレドニア(3.6%)の順だった。6大鉱物の輸入額は、2016年の34億3358万ドル(約4467億円)から20年には68億4792万ドル(約8910億円)へとほぼ2倍に膨れ上がるほど、拡大傾向にある。

 リチウムやレアアース、グラファイトなどは、中国の占める割合が絶対的だった。バッテリーの原料で2030年には需要が現在の42倍に膨らむと予想されるリチウムは、中国からの輸入割合が79%を上回った。電気自動車のモーターや風力発電機など、新再生エネルギーに欠かせないレアアースに占める中国の割合は73%、主にバッテリーの陰極材として使用されるグラファイトは87%に上った。IEA(国際エネルギー機関)は「炭素中立に必要な鉱物の埋蔵・生産国は、石油やガスよりも限定されており、市場の独寡占がより深刻化しつつある」と危機感を募らせる。地政学的な変数や需要・供給の変化に、サプライチェーンや価格がより敏感に反応するというのだ。

■民間企業は力不足…国営企業は身動きできず

 LGエネルギー・ソリューションは最近、LG化学やLXインターナショナル、ポスコなどと共にコンソーシアムを立ち上げ、インドネシアのニッケル鉱山への投資に乗り出したほか、ポスコ・ホールディングスは2024年のリチウム調達をめどに、アルゼンチンのリチウム工場に5兆ウォン(約5100億円)を投資する意向を固めた。昨年はオーストラリアのニッケル製錬会社「レイブンソフ」の株式を買収し、タンザニアのグラファイト鉱権を手に入れている。

 しかし、ある資源開発会社の役員は「ここ10年間、海外資源開発における弊害により、人材はもちろんのことノウハウまでも失ってしまった」とし「最初から地面に体当たりしなければならない」と苦しい状況に触れた。過去、国内企業による海外鉱物への投資をリードしてきた韓国鉱物資源公社が昨年、韓国鉱害管理公団と統合され、海外資源の開発機能を失ってしまったため、中心的役割を担う部署が消滅してしまったのだ。他国の国営企業や創業100年を誇る海外大手が幅を利かせている市場で、民間企業だけで競争するには力不足との見方が優勢だ。ソウル大学のチェ・ジョングン教授は「海外資源の開発のためには、10回ほど失敗しても問題ないくらいの資本力と、専門技術を持ち合わせた人材、事業パートナーが必須」とし「短期間で成果を挙げることに執着せざるを得ない民間企業だけに成り行きを任せているようではならない」と警鐘を鳴らす。仁荷大学のシン・ヒョンドン教授は「資源開発は、どんなに投資したところで結果が出るといった保障がないため、企業のオーナーも簡単に投資に踏み込めないのが現実」と内情に触れる。

 韓国の石油公社、ガス公社、鉱物公社を統合した概念の日本の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)のような機構を立ち上げ、資源開発に全権を付与しなければならないといった意見もある。仁荷大学のカン・チョング招聘(しょうへい)教授は「韓国は、政権によって海外資源への開発投資額が大幅に変化してきたため、技術や人材を蓄積できなかった」とし、海外資源開発と関連し、中・長期的な計画と実行に責任を持てる独立機関の設立を促した。

チョ・ジェヒ記者

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