【6月7日付社説】デモ被害者の苦痛を無視してきたのに文前大統領が当事者になるや禁止法を提出した共に民主党

 韓国野党・共に民主党の鄭清来(チョン・チョンレ)議員ら10人の議員が集会・示威法に定められた「100メートル以内のデモ禁止対象」に前職大統領の私邸を新たに追加する法改正案を国会に提出した。同党の韓秉道(ハン・ビョンド)議員も個人の名誉と平穏な私生活を顕著に害する行為を禁じる法律の改正案を提出した。慶尚南道梁山の平山村にある文在寅(ムン・ジェイン)前大統領の私邸前で行われている抗議デモを封じ込める狙いがあるようだ。

 一部ユーチューバーらによる平山村でのデモは明らかに一線を越えた。問題のデモでは通常だと口にもできないような恨み、憎悪、侮辱の言葉が飛び交い、拡声器の騒音で周辺住民にも深刻な被害が及んでいる。自由は相手の目の前で止まるという言葉がある。表現の自由は可能な限り認めるべきだが、他人の平穏な生活を害し、人権を侵害するレベルになればこれを容認することはできない。

 しかし過去5年にわたり相手陣営に対する騒音・侮辱が乱舞するデモを傍観し、あるいは助長さえした共に民主党が今になってこれを問題視する資格があるのか疑問だ。2017年には李明博(イ・ミョンバク)元大統領の私邸前で彼の逮捕を求めるデモが4カ月にわたり毎日のように続けられたが、当時の文在寅政府関係者は自制を求めるどころか時には現場を訪れ、デモ隊を激励していた。青瓦台(韓国大統領府)周辺のソウル市鍾路区清雲洞や孝子洞周辺で全国民主労働組合総連盟が長期にわたりデモを続け、これにより苦痛を受けていた周辺住民が嘆願した際も同様で、文在寅政府の下にあった警察は見て見ぬふりをした。周辺のソウル盲学校の父兄らが「子供たちは音に敏感だ」と訴えても警察は傍観を続けた。

 大企業のビル周辺はかなり前から騒音や暴言によるデモの解放区になっている。ソウル市瑞草区瑞草洞のサムスン電子ビル前では大音量によるデモがほぼ毎日、一日も欠かさず行われている。サムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長の自宅前でも今年4月13日から集会やデモが続いている。共に民主党は自分たち側の陣営による過激な抗議行動には何もしなかったが、文前大統領が被害を受ける立場になると集会・示威法の改正に乗り出した。これなどまさに恥知らずのネロナムブル(私がすればロマンス、他人がすれば不倫=身内に甘く、身内以外に厳しいこと)に他ならない。

 他の先進国に比べあまりにも寛大な集会・示威法の改正の必要性はかなり以前から議論されてきた。拡声器を使って怒号を張り上げ、周辺を騒音地獄にしないためには騒音の許容基準から大幅に強化し、米国など先進国のように音響機器を使う際には警察の許可を必要にする形に見直すべきだ。暴言・葬送曲・ヘイトスピーチを続けるデモも禁止しなければならない。しかしこのような集会・示威法の強化は文前大統領の私邸周辺だけではなく、この国のどこでも同じように公平に適用されなければならない。

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  • ▲サムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長の自宅前で抗議行動を続ける同社の労働組合員。4月13日撮影。/NEWSIS

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