2019年に脱北したものの強制的に送り返された北朝鮮の漁民たちが自筆の意向書で正式に亡命の意思を明らかにしていたことが確認された。韓国統一部が「北の住民たちは亡命意向書の様式に人的事項や亡命希望などを自筆で作成した」と明らかにした。それにもかかわらず、当時の文在寅(ムン・ジェイン)政権は「亡命の意思に真実味がない」と主張した。当時の国家安保室長は国会で、「亡命の意思が全くなかった」と述べた。そして北の漁師2人が同僚を殺した殺人犯だという理由により目隠しして縄で縛り、北朝鮮に引き渡した。この時、韓国・東南アジア諸国連合(ASEAN)会議に金正恩(キム・ジョンウン)総書記(当時は朝鮮労働党委員長)を招待する親書もあった。南北首脳会談というショーのために亡命を希望した漁師たちを強制的に北朝鮮に送り返し、国民にウソをついたのだ。
脱北者は政府合同調査で公式の亡命意向書を書けば大韓民国の国民として認められる。脱北した漁師たちもこの手続きをすべて踏んでいた。したがって、彼らがいくら同僚殺害容疑をかけられていたとしても、北朝鮮に送り返してはならない。憲法と国際難民条約に反する。罪があるなら、韓国の法律に基づいて裁判を受け、処罰されればよい。
しかし、当時の国家情報院長は三日間で合同調査を急いで終了させ、国家安保室は彼らの意思は問わずに北朝鮮に送り返すことを決定した。自殺の危険性を防ぐとして警察特攻隊まで動員して極秘で北に送り返した。この秘密作戦は、当時の安保室第1次長が板門店の共同警備区域(JSA)大隊長から受け取った極秘メッセージが報道機関にキャッチされて公開された。国家安保室と国家情報院が自分たちの考えで彼らの亡命意思を断ち切り、有罪か無罪かを決め、韓国国民になる資格まではく奪したのだ。実に反人権的で違法な行為と言わざるを得ない。
当時の統一部長官は国会で「北の漁師たちは『死んでも帰る』とはっきり陳述した」と大声を上げた。しかし、それはまったく事実ではなかった。彼は最近になって「亡命意向書の提出を後になって伝え聞いた」と言った。統一部長官も知らずに政権の中核人物だけでこうしたことを行ったのか、それとも長官が今になって責任逃れをしようとしているのかは分からない。文政権は西海(黄海)で韓国の公務員が北朝鮮軍に射殺され、遺体を焼かれた時も何の措置も取らなかった。そして、根拠もなく越北者(北朝鮮に行こうとした人)だと断定した。国民の命まで金正恩総書記の平和ショーの供え物としてささげるため、とんでもないウソをついてきたのだ。