石炭不足の中国から和解の手…豪「まずは制裁解除せよ」(後編)

中国の経済報復2年、逆転した形勢

石炭不足の中国から和解の手…豪「まずは制裁解除せよ」(後編)

■中国の制裁に遭っても石炭輸出は急増

 オーストラリアは余裕の立場だ。アンソニー・アルバニージー首相は、王毅外相が提示した四つの関係回復条件について「要求には応じない」と語った。アルバニージー首相は「両国外相会談は建設的で、関係回復のための第一歩を踏み出した」としつつも「関係改善のためには、中国が貿易制裁を解くことからやるべき」と発言した。またアルバニージー首相は「選挙を通して政権は変わったが、中国に対するオーストラリアの見方は変わっていない」とし「オーストラリアはどんな問題についても立場を変えない」とコメントした。

 オーストラリアの元高級官僚(外務貿易省インド・太平洋グループ担当副次官)で米国アジア・ソサエティー政策研究所(ASPI)シニアフェローのリチャード・モード氏は「関係回復をするつもりなら、中国はオーストラリアの対中政策の連続性について忍耐する準備をすべきだろう」と語った。

 市場の状況もオーストラリアに有利に展開している。オーストラリアは昨年上半期、中国の石炭禁輸措置で輸出量が多少減ったが、下半期からは国際的な石炭価格が跳ね上がり、輸出額の伸びが続く大勢にある。

 ウクライナ戦争が起きた直後の今年2月28日、国際石炭価格はトン当たり463.59ドル(現在のレートで約6万3387円。以下同じ)で、中国による禁輸措置当時の2020年10月5日の相場(トン当たり57.65ドル=約7882円)に比べ7.6倍の水準となった。石炭価格の高止まりにより、オーストラリアの石炭輸出は、今年5月には前年同期比で20%以上の増となった。

【表】2019年の中国の石炭輸入、国別割合

■オーストラリアの「反中世論」、3年で12%から63%へ

 習近平国家主席が2014年にオーストラリアを訪問し、翌15年に両国間の自由貿易協定(FTA)が発効した時点では、中国とオーストラリアの関係は最良だった。

 2017年、オーストラリア労働党のサム・ダスティアリ上院議員が中国共産党と関連がある中国人実業家から政治資金の提供など後援を受けていた事実が判明したことで、両国関係は悪化し始めた。この事件はオーストラリア政界を一挙に覆してしまい、翌18年にオーストラリア議会は、外国政府による国内政治への干渉を防ぐ内容を盛り込んだ「内政干渉禁止法」を通過させた。

 この事件を、中国による安全保障上の脅威と見なしたオーストラリア政府は、ファーウェイの5G通信機器の使用禁止や新型コロナの起源調査要求など、反中措置を相次いで打ち出した。中国は大々的な経済報復で対応した。

 しかし過去2年続いた中国の経済報復は、効果を出せなかっただけでなく、逆効果を呼んだだけだった-というのが国際専門家の分析だ。ワイン、タラバガニなど一部の分野が被害を受けたが、オーストラリア経済は昨年、プラス成長を記録することに成功し、今年上半期には記録的な貿易黒字を出した。

 経済報復はオーストラリア国民の中国に対する認識を大幅に悪化させた。オーストラリアのシンクタンク「ローウィー研究所」の定期世論調査によると、「中国は安全保障上の脅威か」という質問に対し、「そう思う」という回答は2018年の時点では12%だったが、昨年は63%にまで急増した。同じ期間に、「中国は経済協力のパートナーか」という質問に対する肯定的な回答は82%から34%に急減した。

 エコノミスト紙は、7月26日付で「オーストラリアは貿易制裁を驚くほどうまく切り抜け、中国の脅迫はオーストラリア国民の決心を断固たるものにしただけだった」と報じた。同メディアは「オーストラリア国民は、経済が良くなくても、中国を非難して自国の政治家は批判しない」「オーストラリアの政治指導者にとって、これが国益をしっかり守る力になっている」と伝えた。

崔有植(チェ・ユシク)東北アジア研究所長

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