【コラム】文在寅前大統領を光り輝かせた請求書が国に押し寄せてくる

温室効果ガス削減、年金改革、脱原発、韓電工大、加徳島
拍手喝采を浴びた代価、国に残された莫大(ばくだい)な負担
個人の不正よりも大きな弊害、末永く反面教師とすべき

【コラム】文在寅前大統領を光り輝かせた請求書が国に押し寄せてくる

 「温室効果ガス40%削減」という約束は国家的自害行為だった。2030年までに温室効果ガスを2018年比で40%削減するためには、ポスコのような企業3社の運営を直ちにやめさせなければならない。GDP(国内総生産)が83兆ウォン(約8兆2500億円)減り、経済成長率は4%下がり、働き口は46万件が消えるという分析結果が出た。国家を心配する指導者なら決して取り出すことができないカードだ。

【表】文在寅大統領任期満了前に上方修正された温室効果ガス削減目標

 2021年10月、国連気候変動枠組み条約締約国会議(以下、締約国会議)で文在寅(ムン・ジェイン)前大統領が公開宣言したのがまさにその「温室効果ガスの40%削減」だった。温室効果ガスの低減速度が毎年米国や日本よりも速くなければならず、EU(欧州連合)と比べる場合、2倍以上の加速が要求される。国際社会は「G7(先進7カ国)首脳会議よりも大胆な目標」と文大統領の決断をたたえた。

 文政権が去り、現場に残された企業はため息をついている。「40%削減」どころか、その3分の1も手に負えないというのだ。2030年に締約国会議に出席する大韓民国大統領は「40%削減」という約束に違反したことに対する謝罪を迫られる恐れが極めて高い。任期7カ月を残した文前大統領が虚勢を張ることで拍手喝采を浴びた代価を、代わりに清算することになる。

 2017年6月19日、就任1カ月を過ぎたばかりの文前大統領が「原発は安全でもなければ経済的でもない」と発言した。このように宣言した脱原発方針に、支持者たちは歓呼した。脱原発はキロワット時当たりの発電コストが60ウォン(約5.9円)である原子力を120ウォン(約11.8円)のLNG(液化天然ガス)と200ウォン(約19.8円)の太陽光・風力に代替するというものだった。健全な原発を止めるだけではなく、建設中のものまで中断する場合、2-3倍の損害となる。2030年までに損失が140兆ウォン(約13.9兆円)、それに伴う電気料金の引き上げが40%という産業資源部(省に相当、以下同じ)の試算が出された。文政権はこの事実を覆い隠し、電気料金の引き上げを阻止した。むしろ真夏時のエアコン使用に伴う電気料金を安くした。毎年10兆ウォン(約9900億円)台の黒字を計上していた韓国電力は、文政権の5年間で負債が34兆ウォン(約3兆3700億円)も増えた。

 文前大統領は、自らが経営難の引き金を引いた韓電に「韓電工大」という「こぶ」まで付けた。韓電工大教授の年俸は一般の国立大の2倍に相当する。学生たちの授業料や寮費も免除される。5年以内に大学の4分の1が閉校を余儀なくされる現状だが、文在寅大統領の選挙公約のために特恵的な支援を引き出した。10年間にわたって韓電工大に支援しなければならない資金は1兆6000億ウォン(約1590億円)。文政権が韓電に負わせた全ての負担が電気料金の引き上げとなって押し寄せている。


 李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クンヘ)元大統領も釜山の加徳島新空港を大統領選挙の公約として掲げた。しかし、大統領になった後は国民に対して謝罪し、事業を白紙に戻した。空港から得られる利益がコストの半分だという経済部門の評価書に目を通して以降は、良心の思いに触れ、国家指導者として到底推し進めることができなかったのだ。文在寅元大統領は、民主党のオ・ゴドン釜山市長のセクハラ問題で補欠選挙を行うことになると、再び加徳島新空港のカードを取り出した。選挙1カ月前に空港の建設予定地を訪問し「この敷地を見ていると胸の高鳴りが止まらない」とし、加勢の様子をうかがわせた。文前大統領が言い放った加徳島新空港が2029年までに総工費13兆7600億ウォン(約1兆3700億円)で建設される予定だ。

 2018年11月、保健福祉部は国民年金改革のための四つの選択肢を大統領府に報告した。所得の9%を保険料として支払い、所得の45%を年金として受け取る体制では、2057年に基金が底を突くからだ。文在寅前大統領は「国民目線にそぐわない」と棄却した。支払い額が増えたり少なくなったりする代案は、即座の人気へとつながらないためだ。しかし、今ではこれ以上支払わずに未来の大金が用意されるといった魔法などあり得ない状況を迎えている。小学1、2年生の算数と同じくらい明らかな理屈だ。他の代案を出せという大統領の注文は、100ウォン(約10円)を与えながら150ウォン(約15円)のパンを買ってくるよう命じ、残りの50ウォン(約5円)は踏み倒すよう脅迫する校内暴力の強制的買い出しにほかならない。結局、文政権の5年間で年金改革はなされなかった。これにより年金基金の枯渇時期が2055年へと2年繰り上げられた。文前大統領の責任回避により未来世代にさらなる負担を与えたわけだ。

 文在寅前大統領は、朴槿恵政権が日本と結んだ慰安婦合意を事実上破棄した。「被害者の立場が反映されなかった」という理由からだった。だとすれば、おばあさんたちが望む合意のために日本に再交渉を要求しなければならなかった。ところが、5年間何もしなかった。より良い合意を得る能力も自信もなかったからだ。反日感情を基盤とした合意破棄により政治的利益だけを得たのだ。韓日関係の破綻に伴う負担は、次期政権の重しとなってのしかかっている。

 文在寅前大統領は国家の将来よりも人気と利害関係を優先した。こうしたことが次々と請求書として舞い込んでいる。国に及ぼした害悪が歴代大統領の個人不正とは比べものにならない。明確に記録として残し、反面教師としなければならない。

金昌均(キム・チャンギュン)論説主幹

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