【萬物相】プロポーズからして大変な韓国

 ある人が先日、ソウルの高級ホテルに行ったところ、格式のあるきちんとした服装の若者たちが大勢いて驚いたそうだ。不思議に思って調べてみると、プロポーズする若者たちだったという。このホテルのレストランはプロポーズの「名所」だとのことだ。プロポーズに名所があることをその時、初めて知ったそうだ。ホテルでのプロポーズが流行するや、どのホテルでも我先にと関連プランを出すようになった。数百万ウォン(数十万円)するホテルプランでも利用する人は多い。ソウルで人気の5つ星ホテルは、数年前まで月2-3件だった予約が、最近は月20-30件も殺到している。その多くがプロポーズだそうだ。プロポーズもせずに結婚した中年以上の人々にとっては隔世の感がある。

【写真】バルーンに一面の花に…インスタグラムで「#プロポーズ」と検索すると最初に出てくる華やかな写真

 写真共有ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)「インスタグラム」で「ホテル プロポーズ」とハッシュタグ(#)を付けて検索すると、写真が数万枚ヒットする。花やキャンドル、「Marry Me(私と結婚して)」と書かれた風船、ハートが描かれたケーキの前で若い男女がほほ笑んでいる。SNSの「映え」を意識する風潮がこれをあおっているという分析もある。ある男性は「彼女が『SNSに載せられるようなプロポーズをしてほしい』と言ってきたので、無理してホテルのプランを申し込んでお金を払った」と言った。

 それでもまだこうしたことは一部の話だろうが、外信も注目している。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は「こうした豪華なプロポーズが、そうでなくても結婚をためらっている韓国の男性をいっそう委縮させている」と報道した。ホテルでプロポーズするために一晩で4500ドル(約60万円)使った男性の訴えも紹介した。ホテルでプロポーズする際に渡すプレゼント代の負担も大きいという。女性が「私の友達がプロポーズのプレゼントで受け取った高級ブランド品よ」とSNSに投稿された写真を見せれば、男性は頭を痛めることになる。

 このようなプロポーズに対する見解は男女で分かれる。ある世論調査会社がアンケート調査したところ、「ホテルでプロポーズしてもらいたい」と回答した女性は40%を超えたそうだ。ところが、同じ調査で男性の33%は「金銭的な負担のためプロポーズはしたくない」と答えたという。結婚資金だけでも負担が大きいのに、数百万ウォンかけてプロポーズまでしなければならないのか、という反論だ。だが、「ホテルでのプロポーズを望むことを女性のせいにばかりはできない」という声もある。韓国では不動産価格が暴騰し、それなりにきちんとした家で新婚生活を始めることは望めなくなっている。プロポーズでぜいたくするのは、それに対する償いの気持ちだというのだ。「給料の節約で家は買えなくても、ホテルでのプロポーズはできる」という宣伝コピーがそうした心理を突いてくる。

 米国の女子体操界のスター、シモーネ・バイルズが昨年初め、プロポーズを受けた時の写真をSNSに掲載した。屋外にテントを張り、豪華な花の飾りもなかったが、ひざまずいてプロポーズする交際相手のプロ・アメリカン・フットボール(NFL)選手の前で、幸せそうに白い歯を見せて笑っていた。高価で豪華なプロポーズより、このような笑顔にさせてくれる相手を探すことの方が大切だろう。

金泰勲(キム・テフン)論説委員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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