F16韓国配備、「神の一手」だった【萬物相】

 米国が1970年代に開発したF16は、現役戦闘機の中では世界最高のベストセラーだ。およそ4500機が生産され、世界25カ国に配備された。もともとは「空の帝王」F15の補助戦闘機として開発された。ところが「ファイティング・ファルコン」という名前が示すように、軽くて速く、空対空戦闘力に優れていた。単発エンジンなので価格も安かった。サイズに比して武装の搭載量や航続距離が長く、さまざまな作戦に投入できた。「万能戦闘機」「戦場の働き者」と呼ばれた。

【写真】烏山米空軍基地を飛び立つF16戦闘機

 F16は実際、空中戦で撃墜されたことがないという。82年のレバノン紛争時、イスラエル空軍はシリアとの空中戦でMiG21やSu22など84機を撃墜した。このうち44機がF16の戦果だった。81年にイスラエルがイラクの核施設を超低空飛行で爆撃した「バビロン作戦」の主役も、F16だった。F16の性能は今も向上し続けている。最新型の位相配列(アクティブ・フェーズドアレイ/AESA)レーダーや電子戦装備を積み、外部取り付け型の燃料タンクを用いることで航続距離も伸びた。戦術核も搭載できる。最新型のF16VはF15をしのぐという。

 F16は国際政治や戦争の変数としても作用する。スウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟に反対するトルコが突然賛成に回ったのは、米国が旧式のF16しか持っていなかったトルコに対する新型のF16販売を承認すると決めたからだ。トルコとギリシャが国境紛争で同時に発進させた戦闘機もF16だった。

 西側諸国がウクライナにF16を支援するというニュースが伝えられると、ロシア外相は「核の脅しと見なす」と怒った。ロシアの並みの戦闘機ではF16に対抗できないからだ。F16が戦争の構図を変えるゲームチェンジャーになることもあり得る。

 韓国も現在、F16をおよそ160機運用している。数が最も多く、韓国空軍の主力だ。現在、最新型への改良が進んでいる。だが一時は、誤った決定で目も当てられないありさまになるところだった。80年代に韓国軍の戦力増強を図る「栗谷事業」の一環として推進した韓国型戦闘機事業(KFP)で、韓国政府はF16ではなくF18を選定した。価格は高いけれど性能は優れているというのが理由だった。だが米国が価格を引き上げ続けたことから、後になってF16に変えた。賄賂ロビー説、秘密資金説が浮上するなど論争が拡大した。当時の予測と異なり、F18は今では将来の見込みのない戦闘機だが、F16は性能が向上し続けている。韓国の軽攻撃機FA50が最近ポーランドに売れたのも、F16と互換の性能が優れているからだ。40年前のF16配備は韓国にとって「神の一手」だったのだ。

ぺ・ソンギュ記者

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