裁判に遅刻できる「被告人」李在明【萬物相】

 欧米の法廷は厳格だ。韓国のように判事が法廷に入ると傍聴客全員が起立する。裁判官個人ではなく、司法府に対する尊重の意味がある。約10年前、米国に研修に行った際のこと。ある民事裁判で事件当事者であるおばあさんがあくびをしながら小さな声を出すと、判事が直ちに警告した。「Don't add your own sound.」--。雑に解釈すれば「雑音を立てるな」ぐらいの意味だろう。まして刑事裁判は言うまでもない。そんな裁判に被告人が遅刻するなど想像し難いことだ。

【写真】第2回公判に出席した共に民主・李在明代表

 法律で被告人は裁判への出廷義務がある。そこには所定の時刻に来て、誠実に裁判を受けなければならないという意味が含まれている。やむを得ない事情までをも考慮して早めに来いという意味だ。このため、弁護士は通常、在宅起訴された被告に「裁判開始20~30分前には法廷に来るように」と言う。敢えてそう言わなくても、ほとんどの被告は自発的に早めに来る。自分が遅刻して自分の「生殺与奪権」を握っている判事を待たせるというのは恐ろしいことだからだ。

 2006年7月、ある刑事裁判で拘置所に収監されている被告3人が同時に遅刻したことはある。それには事情があった。被告らが拘置所で証拠隠滅を試みているという情報を入手した検察が裁判の数日前に被告らを別の拘置所に移送したが、拘置所間で公判日程の引き継ぎができていなかったために起きたハプニングだった。拘置所では大騒ぎになり、彼らを急いで法廷に護送して裁判は1時間後に始まった。極めて異例のことだった。

 民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表が午前10時半に予定されていた大庄洞事件の第2回公判に7分遅刻した。李代表が到着してから判事が法廷に入り、裁判は16分遅れて始まった。李代表がなぜ遅れたのかは不明だが、裁判を軽視していると言われても仕方がない。裁判長は李代表に「(今後は)10分早く来て裁判に備えてほしい」と上品に告げた。しかし、裁判長には無視されたという感情があったはずだ。

 李代表は先ごろ開かれた自身の公職選挙法違反事件の裁判では「国政監査のために欠席する」という意見書を出しておきながら、国政監査にも出席しなかった。裁判所を無視してもてあそんだことになる。李代表のこうした態度は、自分の逮捕状審査を担当した判事が心理的に萎縮して棄却決定を下し、他の判事も同じだろうという「余裕」が心の中にあるからかもしれない。「裁判に遅刻できる被告人」ーー。李代表が新たに書き記す司法の黒歴史の1ページだ。 

崔源奎(チェ・ウォンギュ)論説委員

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