「風力発電機がレーダー電波を妨害する恐れ」 韓国軍が反対した洋上風力発電事業、文政権は国防部との協議なしに推進していた

 韓国全土で推進されている洋上風力発電事業が最近、国防部との摩擦で遅れている。発電事業許可を取得後、国防部の軍による作戦性検討を受けたが、大半でレーダー電波が遮られるなど軍の作戦遂行に問題が生じることが判明したためだ。無秩序な発電事業許可の発給で国家安全保障が脅かされる状況だとの懸念が示されている。

 国民の力の韓茂景(ハン・ムギョン)国会議員によると、国防部はこれまでに発電事業許可を受けた16カ所の洋上風力発電事業を検討した結果、3カ所は事業推進に同意せず、残りの13カ所については条件付きで同意した。

 このうち2020年に文在寅(ムン・ジェイン)政権主導で進められた保寧洋上風力発電団地は国防部との協議なしに推進されたことが分かった。 忠清南道保寧市が韓国中部発電と共同で25年までに計6兆ウォン(約6600億円)を投入し、風力発電機125基を設置する内容だ。計画発表してから1年後の21年、国防部はようやく協議検討文書を受け取った。国防部は洋上風力発電施設が建設されれば、レーダーの電波が遮られるなど軍の作戦遂行に困難が予想されるため、発電機の位置を再検討する必要があると主張した。

 これについて、韓議員は「文在寅政権は洋上風力発電所の建設でレーダー基地の役割が失われれば、軍の作戦に支障を来す恐れがあるということを十分に知っていたにもかかわらず、事前に国防部の検討を受けていなかった」とし、「文在寅政権が国家安全保障よりも再生可能エネルギーの拡大を優先したために可能だったことだ」と主張した。

 それにとどまらず、最近検討対象となった慶尚南道統営市の欲知島付近の洋上風力発電事業については、陸海空軍がいずれも問題を提起した。国防部が条件付き同意をした13カ所の事業もレーダーへの影響などの問題を解決しなければ、事業が推進できない。

 さらに大きな問題は、国防部の検討を受けていない風力発電団地が多いことだ。現在まで産業通商資源部から発電事業許可を受けた洋上風力事業団地80カ所のうち64カ所は国防部との協議すら開始していない。

 米国などでも洋上風力発電所の建設が安全保障の脅威要因となる可能性があるとの指摘が出ている。ブルームバーグ電によると、米国防総省は新たに風力発電が検討されてきた大西洋地域の大半が軍事作戦と重なるとする意見を示した。

 韓議員は「三方を海で囲まれ、北朝鮮の脅威が存在する韓国の環境上、国家安全保障の確立が何よりも必要だ」とし「現在の無秩序な発電事業許可は洋上風力発電の拡大に役立たないのみならず、むしろ国家安全保障を脅かす要因になっている」と述べた。

イ・ガヨン記者

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  • 【写真】洋上風力発電所/ニュース1

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