世界の半導体市場は「地雷原」【東京特派員コラム】

 米国のエマニュエル駐日大使が米ウエスタンデジタル(WD)と日本のキオクシアの合併を支持するため、日本の政治家や経済官僚に会うという話が今年夏ごろから東京・永田町に広まった。米国の利害を代弁する米国大使が特定企業による合併交渉の前面に出るのは異例のことだ。エマニュエル大使は、合併後の経営主導権を米国側が持つべきだとの立場を貫いたという。米政府が動くと、日本政府は資金源を握っている金融機関に圧力をかけ、赤字企業2社の合併にもかかわらず、日本の3大銀行は快く1兆9000億円の融資を確約した。

 10月初めの時点ではWDとキオクシアの合併は米日経済安保強化という名分の中で実現しそうだった。WDとキオクシアが合併すれば、世界のNAND型フラッシュメモリー市場でサムスン電子を抑え、一気に首位に浮上する。日本の半導体復活のシナリオが現実感を増すのだ。日本復活の背景には、同じ利害関係で団結した米国と台湾がある。米国にとって盟邦日本の復活は中国の半導体分野での浮上をけん制するカードだ。台湾は米日同盟に協力し、中国の武力による脅威から安全保障を得たい。台湾最大の半導体企業、台湾積体電路製造(TSMC)が台湾政府と協議し、日本に第1工場に続き、立て続けに第2工場の建設を推進するのもそのためだ。

 WDとキオクシアの合併がこじれたのは、SKハイニックスの判断だった。SKハイニックスは2017年、経営危機のキオクシアに約4兆ウォン(約4400億円)を間接投資した。当時キオクシアの株式約60%を取得したコンソーシアムに出資したのだ。 SKハイニックスは金銭的な投資利益が特にない上、巨大なライバルを登場させることになる合併に賛成する理由がない。そこで反対の意向を伝えると、今回は日本の経済産業省が登場した。

 焦った西村康稔経済産業相が、韓国の方文圭(パン・ムンギュ)産業通商資源部長官に会談を提案したのだ。日本経済新聞は「(SKハイニックスの説得に)韓国政府が乗り出してほしいと要請しようとしたものとみられる」と報じた。4年前、半導体素材3品目の韓国への輸出を規制した際、その担当官庁が経済産業省だった。

 SKハイニックスは反対の立場を守り、中国当局も承認する可能性が薄いといった要因が明らかになったことで、今月末の合併はついに頓挫した。石油の次に重要な安全保障物資である半導体を獲得しようとするグローバルな戦場で、WDの横にはエマニュエル大使、キオクシアの横には西村大臣がいたが、SKは孤独だった。米国の支持を背景にした日本のキオクシアは、SKの反対を承知で合併を推し進め、西村大臣は韓国の産業通商資源部に圧力をかける作戦まで練っていたとみられる。

 グローバル安保という政治論理が入り混じった世界半導体市場は一寸先も見えない「地雷原」のような市場になった。韓国国民と政治家が「半導体大国・韓国」というプライドに浸っている間、最前線ではサムスン電子とSKハイニックスが毎日薄氷のような政治的変数の上を歩いている。韓国の半導体が「国益」にどんな意味を持つのか、韓国の政治家と国民も手遅れになる前によく考えるべきだ。

東京=成好哲(ソン・ホチョル)特派員

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  • ▲SKハイニックス本社(京畿道利川市)/ニュース1

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