亡国への道はうそで舗装されている【寄稿】

雇用・不動産政策の失敗を隠した文在寅政権の統計操作ニュースを見て、ポーランドの事例を思い浮かべた
現実とイデオロギーが衝突したら、間違いは現実の方にあるというのか
共産党政権はうそをついて生きてきた…操作された統計、いずれブーメランになる

 その後ようやくバルツェロビチは、報告を受けた統計の指標が事実であると知り、市場経済の活力がこれほどまで良いものだとはいまだかつて予測できなかったと述懐した。経済統計に対するこの逸話は、自分の作った改革案と現実との間にある溝を絶えず点検し、考える良心的経済学者の一面を如実に見せてくれる。

 文在寅(ムン・ジェイン)政権の雇用、不動産、所得関連統計の歪曲(わいきょく)と操作に対する監査院の監査報道を見て、ふとバルツェロビチの逸話を思い浮かべた。自分の改革案を正当化してくれる統計の数値すら疑い、振り返ってみる経済学者バルツェロビチと、統計庁長を更迭してまで自分に有利な統計を搾り取った文在寅政権の経済学者らとの間には、決して越えられない深淵がある。

 実際、社会主義の歴史を学んでみると、かくも多くのうそをついていた政権がかくも長く権力を握っていたということにしばしば驚かされる。事実と統計よりも宣伝と扇動を重視した共産党政権は、うそをついて生きていた。労働者の不満は帝国主義がけしかけたからであって、計画経済の失敗は米国がスーパーコンピューターを輸出禁止品目に組み込んだせいだと強弁し、群衆大会などのイベントで現実を糊塗(こと)した。

 文在寅政権の大統領府も、経済を厳重な現実ではなく、政治的イベントのように考えていたらしい。とりわけ、庶民の生活と直結する雇用政策や不動産政策の失敗を統計操作で隠そうとしたのであれば、自分のせいでさらに苦難に直面した「常傭(じょうよう)職」の人々や持ち家のない庶民を愚弄(ぐろう)する仕打ちだ。現実がイデオロギーと合わず、間違いは現実の方にあるとして現実のせいにするものだ。

 亡国へ向かう道はイデオロギーで建設され、うそで舗装されている。偽進歩(革新)だけの問題ではない。1954年の「四捨五入」改憲定足数操作は、李承晩(イ・スンマン)自由党保守政権の没落のシグナルだった。イデオロギーに対する数字の復讐(ふくしゅう)は左派・右派を問わない。

林志弦(イム・ジヒョン)西江大学教授・歴史学

【図】文政権時代、青瓦台からの圧力で国土交通部→不動産院へと連鎖した統計操作

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