不意打ちを食らうハマス? 「抵抗の枢軸」も口先だけ【萬物相】

 イスラエルと戦争中のハマスの高官級指導者が、パレスチナ自治政府批判に乗り出した。ハマスを代表して外国メディアに頻繁に登場するムサ・アブ・マルズク氏は最近、「アル・ジャジーラ」テレビのインタビューに応じた。「われわれはレバノンのヒズボラとヨルダン川西岸地区のわが兄弟たちに多くを期待したが、パレスチナ自治政府の恥ずべき姿に落胆した」と語った。また、多くの外国人から、一部の自治政府関係者やアラブ諸国が西側に対して秘密裏に「ハマスを除去すべき」と求めているという話を聞いた-とも述べた。

 ハマスはイスラエルとアラブ諸国間の全面戦を誘発しようとして奇襲攻撃を敢行した。ところが今、そんな全面戦の兆しはほとんどない。レバノンのヒズボラはもちろんイランの革命防衛隊、シリアのシーア派政権、イラクの民兵組織など、イスラエルに立ち向かう「抵抗の枢軸」は、言葉では強く言うものの肝心の行動は特に起こしていない。加えて、一部のアラブの国々が、この機会にハマスを除去しようと西側の背中を押しているというのだ。驚くべき話だ。事実であれば、ハマスは味方から不意打ちを食らったことを意味する。

 パレスチナの2大勢力であるハマスと自治政府の内紛は根深い。ハマスはイスラエルとの共存は不可能だという立場だ。もともと、「ハマス憲章」にはイスラエルを消すことが目標だと明記してある。自治政府は違う。イスラエルとの平和交渉は可能で、これを通して独立国家を建設すると主張する。2006年の総選挙、07年の内戦を経て、ガザ地区はハマスが、西岸地区は自治政府が統治し、対立を繰り返してきた。

 西岸地区で自治政府も人気がないが、ハマスに対するガザ地区住民らの支持もかつてほどではない。今年8月、生活必需品とエネルギーの不足に苦しむ地域住民らがハマス糾弾デモに乗り出すと、ハマスが強制鎮圧したこともあった。ニューヨーク・タイムズ紙は「ハマス高官層の縁故主義、腐敗は深刻」と報じた。最近では、ガザ地区の一部住民らがハマスの極端主義に反発し、ハマス指導部の隠れ家などを教えてやってイスラエル軍に協力している、という話も出ている。

 今回の事態で戦闘が拡大するかどうかの鍵を握るイランも、苦心の中にあるという。イランは核開発で経済制裁を受けている上、昨年から女性人権弾圧問題が大きくなり、内部事情が良くない。万博の誘致に全力投球しているサウジアラビアは、パレスチナを支持しつつも行動には一線を画している。イスラエル・ハマス戦争が始まって1カ月。イスラエルの容赦ない反撃を巡る国際社会の世論と中東諸国の同床異夢が、事態の流れを決定付けそうだ。

李河遠(イ・ハウォン)論説委員

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