韓国社会で北朝鮮政権との協力を問題なしとする人々【コラム】

金日成を称賛する越北詩人には寛容、南の文人の一時的な活動は断罪
韓国社会に深く渦巻く巨大な歪曲と偏向

 李庸岳文学賞はいけない、と言いたいのではない。公共の資産である税金を使わずに文学愛好家らが自ら一詩人をたたえるのを、妨げる理由はない。しかし、韓国社会に深く根を下ろしている偏向性はどうしても指摘せねばならない。李庸岳が北で書いた詩まで網羅して2018年に出版された『李庸岳詩全集』は、編者の言葉で「暴圧的な全斗煥(チョン・ドゥファン)軍事政権を引き継いだ軍出身大統領の盧泰愚(ノ・テウ)」「李承晩(イ・スンマン)反共独裁からの連続だった朴正煕(パク・チョンヒ)鉄拳統治下の厳酷な歳月」を適示しつつ「越北以降の作品まで合わせて『李庸岳詩全集』を今ようやく出すというのは、それ故に遅くなったのだとしても随分遅い」と記した。6・25戦争を起こした戦犯で世界最悪の世襲独裁については、一言も言及しなかった。

 李庸岳が北で活動した部分には寛容な姿勢を取り、解放前の詩の世界を別途取り上げて高く評価することはできる。だが、そうした幅広い寛容を、大韓民国で活動した文化芸術人にはなぜ適用しないのか。韓国文学を豊かにする上で李庸岳よりもはるかに寄与した徐廷柱については、一時の行いを執拗(しつよう)に問題視して、ついには「未堂文学賞」を無くしてしまった。今年10月に他界した単色画の巨匠、朴栖甫(パク・ソボ)は、私財を投じて「朴栖甫芸術賞」を作ったが、一部の団体が「維新政権に抵抗しなかった」という理由で攻撃し、結局たった1回で廃止された。韓国社会に深く渦巻いている巨大な歪曲(わいきょく)と偏向は深刻なレベルだ。

李漢洙(イ・ハンス)文化部長

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