犯罪者家族の出版商売【萬物相】

 2015年、日本で1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件の加害者が回顧録を出した。犯行当時中学生だった彼は事件を振り返った本「絶歌」を「元少年A」というペンネームで書いた。自分の犯行について「僕はこの光景を、『美しい』と思った」「もう、いつ死んでもいい。そう思えた」と回顧した。発売から3日間で6万7000部が売れ、ベストセラー1位になった。村上春樹の新作よりよく売れた。数千万円を稼いだ。それに先立ち、彼の両親も息子に関する回顧録を書いた。ただ、印税全額を被害者への慰労金に充てた。最低限の良心はあった。

 米国の連続殺人犯の女、アイリーン・ウォーノスは、男性7人を殺した犯行過程と恵まれない人生について記した自叙伝「モンスター」が注目を集めた。映画化もされ、主演者はアカデミー主演女優賞を受賞した。しかし、結局刑場の露と消えた。妻を殺害したとして起訴されたアメリカンフットボール選手、О・J・シンプソンも告白本「If I Did It(もし私がやっていたとしたら)」で大金を稼いだ。宗教指導者Oshoが1970年代に出した「インナー・ジャーニー」は世界的ベストセラーになった。一時「生ける聖者」と呼ばれたが殺人未遂と毒物疑惑に巻き込まれ悲運の末路を迎えた。韓国の連続殺人犯、姜浩順(カン・ホスン)は2009年、自身の犯行を記録した本を出そうとした。「息子たちが印税でも受けられるように」という理由だった。 しかし、誰も出版に応じなかった。

 学歴詐称で波紋を広げた申貞娥(シン・ジョンア)氏は「4001」という自叙伝を出した。出版社が高額の手付金を提示して競合した。 しかし、反省もなく美化中心の内容だった。違法な政治資金を受け取ったとして処罰された韓明淑(ハン・ミョンスク)元首相は自叙伝で、「10年間悲しみと悔しさで押しつぶされ、真実を書いた」と述べた。しかし、真実はなく言い訳だけだった。

 米国のトランプ前大統領の長男は2019年、父親を擁護し、民主党を批判する「トリガード」という本を出した。1カ月で11万部以上が売れ、ベストセラー1位になった。しかし、共和党がこの本を大量に購入し、後援者に配った事実が明らかになった。 父親の美化に本の販売を利用したのだ。

 韓国の曺国(チョ・グク)元法務部長官の妻チョン・ギョンシム氏が獄中手記を出版した。夫と娘に続き、ほぼ家族全員が本を出版したことになる。曺元長官は「曺国の時間」「ディケーの涙」などで、娘曺ミン(チョ・ミン)氏はエッセイで相次いでベストセラーになった。曺元長官の印税収入だけで8億ウォン(約9,200万円)を超える。熱狂的支持層が本を購入した結果だ。チョン氏が受け取った領置金も2億4000万ウォンに達する。しかし、これらの本には自分たちの犯罪を認めて悔いる部分は見当たらない。家族全員が出版と金儲けばかり考えている。こんな家族もいるのかと思う。

ペ・ソンギュ記者
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