「風の孫」李政厚、父・李鍾範を超えられるか【萬物相】

 韓国のプロ野球で名を馳せた李政厚(イ・ジョンフ)=25=が、メジャーリーグ(MLB)の選手になった。正式にサンフランシスコ・ジャイアンツの一員となり、先週末には入団式と記者会見を行った。父は韓国野球の「レジェンド・オブ・レジェンド」で日本の中日でも活躍した李鍾範(登録名:リー・ジョンボム)=53=だ。先日までLGツインズのコーチを務めていた。李鍾範は1994年、1シーズンに84盗塁を達成するなど走塁能力に優れ、「風の息子」という愛称で呼ばれた。そのため、息子の李政厚は自然に「風の孫」となった。

【写真】李政厚をアニメで紹介したサンフランシスコ・ジャイアンツの公式アカウント

 李政厚は「現役時代の父は本当に速かった。僕より速い」と話した。父親に何を教わったのかと聞かれると「いい人間にならなければならないということ、そして、好調なときにどう振る舞うべきかということを教わった」と語った。李鍾範は息子に「基本的な礼儀」や「自己管理」を求めるだけで、野球については一言も言わないという。言われたのはただ一つ、「左打席に立て」ということだけだったそうだ。

 子どもが親と同じ職に就くケースはさまざまな分野で見られるが、親は子どもに何を教えているのか、世間の注目が集まる。成功するための特別な秘策を伝授するのではないかと気になってくる。李政厚は父親から野球の技術について教わったことはなく、「父は試合で活躍したときもダメだったときも、家に帰るといつも『よくやった』と励ましの言葉だけを掛けてくれた」という。「野球のことで怒られたことは一度もありません。父は分かっていたんでしょう。試合でうまくいかなかったとき、一番悔しいのは選手本人だってことを」

 元サッカー選手の車ドゥリ(チャ・ドゥリ)は、韓国サッカー界のスターで韓国代表監督も務めた父の車範根(チャ・ボムグン)についてこう話した。「どんなにサッカーがうまくなっても父の足元にも及ばないので、少し憎いと思うこともありました」。もちろん、本当に憎いという意味ではない。「父の壁」を遠回しに表現したのだ。2人の息子をバスケットボール選手に育て上げた韓国の「バスケットボール大統領」こと許載(ホ・ジェ)は「とにかく根性のある選手になってほしい」と言っていた。息子たちに「特別扱いはしない」とも伝えていたとのことだが、あるテレビ番組で次男が許載に「お父さんは(僕たちに)何をしてくれた?」と尋ねると、許載は「DNAをあげたじゃないか」と話した。

 「ゴルフの皇帝」ことタイガー・ウッズは試合で息子のチャーリー君に「スマートフォンを見るのをやめなさい」と言いながらも「私のスイングをまねるのではなく、マキロイと同じように振りなさい」と話したという。ローリー・マキロイの「バランスのいいショット」を学べと言ったのだ。それが親の心というものだ。一方、子どもにとっては、偉大な親を持って得意な気分になるのは一瞬で、「親がスター」というレッテルが重荷になってくる。李政厚は父の打ち立てた通算1979安打の記録を破れるだろうか。「父親と同じくらい頑張れ」と言われて育ったが、これからは「父親を超えられるか」が課題になる。それでも、父の心はただ一つだ。「息子よ、失敗しても下を向くな…」

キム・グァンイル記者

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  • ▲イラスト=パク・サンフン

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