全てを監視する国、「旅行忌避国」になった中国【萬物相】

 2023年のクリスマスシーズン、旅行のコストパフォーマンスだけを見ると日本より中国の方がはるかに良い。東京で最高級の「帝国ホテル」は宿泊費が1泊230万ウォン(現在のレートで約25万円。以下同じ)にもなるのに対し、上海で最高級の「ウォルドーフ・アストリア」のスイートルームは100万ウォン(約11万円)水準だ。上海の五つ星ホテルの平均宿泊費は50万ウォン(約5万5000円)程度で、東京の半分にもならない。ゴールデンタイムのソウル-東京間の往復航空運賃は100万ウォンに達するが、ソウル-上海間は50万ウォンのラインだ。上海がコスパのいい旅行先になった理由は簡単。外国人観光客の足が途絶えたからだ。

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 2023年上半期に中国を訪れた外国人観光客の数は47万人に過ぎなかった。観光で日本を訪れた人数(1071万人)の4%という水準だ。新型コロナ以前の2019年上半期(856万人)と比べ、95%も急減した。このところ、紫禁城や万里の長城では、西洋人観光客なら誰だろうとセレブ(有名人)のようにもてなされるという。現地の中国人が先を争って「一緒に写真を撮ろう」と駆け寄ってくるからだ。中国が旅行忌避国になったのは、2023年7月から施行された反スパイ法の影響が大きい。スパイ行為を「国の安全保障および利益に背く活動」と一方的に規定し、外国人の逮捕・抑留が頻発したことから、西側の多くの国が中国出張・中国旅行を控えるよう呼びかけた。

 韓国企業も、中国出張者には厳重な注意を呼び掛けている。重要情報が保存された既存のスマートフォンは韓国国内に置いておき、「サブフォン」を持っていくようにしている。サムスン電子は中国出張者に、中国批判の記事を検索しないこと、SNS(交流サイト)でファイルを転送しないこと、軍事・防衛産業施設やデモの現場を訪れたり写真を撮ったりしないことなど、禁忌となる事項を事前教育している。

 AI(人工知能)を用いた顔認識技術をベースとする中国の国家監視網は、中国国内にいる脱北者の身辺の安全にも大きな脅威となっている。ホテル、鉄道駅、主要な街頭の各所に設置された「顔面認識機」で脱北者を見つけ出すので、脱北支援活動が急激に萎縮しているという。ある脱北者支援団体の関係者は「ホテルを避けて民宿だけを利用しても、中国警察はこちらの動きをことごとく把握しており、身の毛がよだつ」と語った。

 全てを監視する国になった中国は、世界3大金融ハブだった香港に直撃弾を与えた。反中活動家を終身刑に処する国家安全維持法を2020年に施行した後、グローバル金融各社が大挙撤収し、香港の金融関係者らは香港を「金融ハブ遺跡」と自嘲している。ゴールドマン・サックスの社員は「世界3大金融ハブを建設するのに100年かかったが、廃虚と化すのに5年もかからなかった」と嘆いた。共産党崇拝者、習近平がつくった新しい中国だ。

金洪秀(キム・ホンス)論説委員

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